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2016年03月 アーカイブ

2016年03月31日

企業版ふるさと納税

なにかと話題が多く、注目が集まっている「ふるさと納税」ですが、これまでは個人が主な対象でした。

平成28年度改正では、地方公共団体が行う一定の地方創生事業に対して寄附を行った場合に、寄附額の30%を法人事業税、法人住民税、法人税から控除できる「企業版ふるさと納税」(地方創生応援税制)が創設されます。

現状、地方公共団体へ寄附した場合は全額損金算入できることになっています。

企業版ふるさと納税では、さらに寄附額の3割を控除できることになります。


① 法人事業税

控除額 寄附額の10%

上限額 法人事業税額の20%


② 法人住民税

控除額 寄附額の20%(道府県民税法人税割額から5%・市町村民税法人税割額から15%)

上限額 法人税割額の20%


③ 法人税

控除額 法人住民税で控除しきれなかった額(寄附額の10%が限度)

上限額 法人税額の5%

例えば、100万円を寄附した場合、現行では実効税率30%として、約30万円の減税となります。

この寄附を、企業版ふるさと納税で行った場合、さらに約30万円の減税となり、合わせて約60万円の減税となります。

この制度は、改正地域再生法の施行日から平成32年3月31日までに寄附金を納めた場合に、その納めた事業年度で控除することができます。

ただし、この制度の適用には、地方公共団体が地方創生事業について地域再生計画を策定し、国の認定を受ける必要があります。

また、国から地方交付税を交付されていない地方公共団体(東京都、愛知県豊田市など)は、対象除外となります。

寄附を受ける地方公共団体は、規程の範囲内でお礼をすることが認められるようですが、寄附の代償として経済的利益を与える次のような行為は禁止されます。

・寄附額の一部を補助金として供与すること

・入札や許認可で便宜を図ること

・有利な利率で融資すること

個人対象のふるさと納税と違い、地方公共団体から特産品が贈られるということは無いようです。

2016年03月30日

合計所得金額とその適用

確定申告は、最終税額の確定の手続きであり、また、納税の過不足額を精算する手続きでもあります。

この最終の確定税額を算出する過程において、無視し、または避けて通ることができない、各種適用の是非を判定する「要となる数値」があります。
これが「合計所得金額」です。

この合計所得金額は、様々な場面で登場します。

例えば、配偶者控除、扶養控除等の適用場面のみならず、繰越控除の適用といった場面においても登場します。

そこで、頻繁ではありませんが、見過ごしてしまうと税額にすくなからぬ影響を与える場面、3例を紹介し確認してみたいと思います。

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例適用

この場面ですが、合計所得金額が3000万円を超える場合には、一見適用がないのでは、と思ってしまうのですが、適用がないのは、あくまで、損失の繰越控除の特例を適用する年分だけであり、損失が生じたその年の損益通算の特例適用については、まったく所得金額の要件はありません。

このような場面、あまり遭遇することはないと思いますが、失念すると影響が大です。

なお、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例も同様です。

国外居住親族の扶養控除等の適用

国外に居住している親族についても配偶者控除や扶養控除等の適用があり、その要件の1つに合計所得金額38万円以下があります。

この合計所得金額の範囲ですが、あくまで、我が国、国内で得た所得の合計金額であり、国外で得た所得は、その多寡にかかわらず、その範囲には入りません。


配偶者特別控除の適用

この控除を適用できるのは、納税者の合計所得金額が1000万円以下の場合です。

年末調整の段階でこの要件を満たしていても、別途、納税者に土地等の譲渡所得、報酬等の雑所得、懸賞金等の一時所得があった場合には合計所得金額1000万円を超えることもありますので、注意が必要です。

ちなみに、この合計所得金額ですが、申告不要となる所得であっても、合計所得金額の判定ではその所得を含めることになっています。
 

2016年03月29日

受取利息の源泉税が変わります

平成28年1月1日以降法人が受け取る預金の利子には、地方税(都道府県民税利子割)が課税されなくなりました。

この改正は平成25年の税制改正でなされました。

平成27年12月31日までに法人が受け取った預金の利子には国税15.315%、地方税5%の源泉税がかかっておりましたが、平成28年1月1日以降法人が受け取る利子には地方税5%の源泉税がかかりません。

法人の経理担当者は要注意

個人の方は、従来通りなので、特に気にする必要はありませんが、法人の経理を担当されている方は、経理処理に注意が必要です。

通常、預金の利子は源泉徴収税額を控除した残額が通帳に記載されます。

通帳に797円の利子が記帳されていた場合を例に説明いたしましょう。

従来は797円を国税と地方税合わせて20.315%の源泉税が控除された残額と認識し、利子は797円÷0.79685=1,000円として以下の処理をしておりました。

(預金)797      

(法人税等)153国税  (受取利息)1000

(法人税等)50地方税

しかし平成28年1月1日以降に受け取る利子には地方税が課税されておりませんので以下の処理となります。

797円は国税の15.315%が控除された残額ですから、割り返す率は100%-15.315%=84.685%となります。

797円÷0.84685=941円が受取利息の金額となり、以下の処理となります


(預金)797      (受取利息)941

(法人税等)144国税


2月の経理処理は注意しましょう

定期預金の利子は、その内訳が通知されますので、地方税が源泉されていないことに気が付きますが、普通預金の利子は単に通帳に源泉徴収後の金額が記載されるだけです。

2月は多くの銀行の普通預金の利子が計上される月ですので注意してください。


2016年03月28日

その領収書、経費で落ちますか

その領収書は経費になりますか?

文筆業を営むAさんは、参加者が医者、歯医者、弁護士など多岐にわたる異業種交流会を主宰しています。

年に数回、昼は伝統芸能に触れ、夜は鮨会と称しておいしいものをいただく会です。

情報交換と交流が趣旨の会ですが、内実は子供が同級生同士のオヤジの集いです。

実費を割勘にしますが、希望者は店から“宛先なしの割勘分の領収書”をもらいます。

この領収書は経費でOKでしょうか?


経費とは

個人所得税で経費となるか、法人税計算で損金となるかについては、所得税法37条(必要経費)と法人税法22条3項(各事業年度の所得の金額の計算)
で規定されていますが、判断基準は「収入を得るために直接要した費用かどうか」です。

その交流会が文筆業の役に立っていれば経費とすることは可能ですが、趣味と実益を兼ねておりますので、調査の時は、説明を求められると思います。


領収書よりレシートの方が説明が容易

「宛先が自分名の領収書はOKだが、『上様』領収書はだめ。レシートよりも宛先の書かれた領収書が必要」と一般的には信じられているようですが、レシートには人数・時間・品名等の細かな情報が記載されます。

単に「御食事代」としか記されていない領収書よりも、レシートの方が経費性を証明しやすいという側面があります。

あえて情報の少ない領収書をもらい直すよりも、レシートに参加者・関係・目的などを手書きで記載しておく方が経費性の説明が容易となります(レシートは多弁なのです!)。


領収書がなければ経費にできないか?

Aさんにとっては、参加者が本の執筆時などには格好の取材源です。

事実、本の内容に反映させましたし、Aさんが新聞や雑誌から取材を受けたときも、この交流会で得た情報を有効活用できました。

気を付けて領収書をもらうように心がけていますが、忘れてしまう場合もあります。

でも領収書がなくとも、日時・相手先・目的などを記した「支払証明書」を適時に作成しておけば問題なく経費として落ちます。

2016年03月25日

役員と旧姓の登記

夫婦別姓について最高裁が初めての判断

平成27年12月、夫婦別姓を認めない民法の規定について争った裁判で、最高裁判所が初めて「憲法に違反しない」という判断を示しました。

夫婦が同じ名字にするか別々の名字にするかを選べる「選択的夫婦別姓」については、女性の社会進出などに伴い長い間検討されてきましたが、今後も制度の必要性を巡ってまだまだ議論が続きそうです。

そうは言っても、職務上旧姓を利用しないと不便が生じる方も多いです。

民間企業や公務員、弁護士などの国家資格者をはじめ、旧姓利用を可とする団体もだいぶ増えてきました。

こうした流れを受け、昨年から、法務局でも役員の旧姓を登記することができるようになりました。


法務局でも婚姻前の氏が登記可能に

これまで、商業登記簿では戸籍上の氏でのみ登記を認めていたため、普段対外的に旧姓で職務を行っている役員であっても、登記簿上では新姓しか確認することができませんでした。

周囲が馴染んでいる氏と登記簿上の氏が違うと、同一人物であることを都度何らかの資料で説明しなくてはならず、不便な思いをされた役員の方々も少なくないでしょう。

平成27年2月27日に施行された「商業登記規則等の一部を改正する省令」では、商業登記簿の役員欄に役員の婚姻前の氏を併記することができるようになっており、こうした煩わしさから解消されることにも期待が持てそうです。

登記の申出方法

婚姻前の氏の登記については現在、

①設立の登記

②清算人の登記

③役員または清算人の就任による変更の登記

④役員または清算人の氏の変更の登記

のどれかを申請する際、同時に申し出ることが認められています。

これらの登記を行う際、婚姻前の氏を証する書面として戸籍謄本等を添付することで、旧姓が括弧書きで併記されます。

なお、旧姓の登記ができるのは婚姻により氏を改めた方に限られており、旧姓のみの登記ではなくあくまで新姓と旧姓との併記になることには注意が必要です。

2016年03月24日

法人に係る利子割の廃止

利子割とは、預貯金等の利子に対して課税される都道府県民税のことです。

金融機関などが、利子等を支払う際に5%の税率で特別徴収し、利子等を支払う金融機関の所在する都道府県へ納めます。

この他に、国税として所得税・復興特別所得税が15.315%源泉徴収されます。

課税されるのは次の利子などです。

① 特定公社債以外の公社債の利子

② 銀行や信用金庫などの預金利子

③ 勤務先預金等の利子


このうち、平成25年度の税制改正により、法人に係る利子割が廃止となりました。

平成28年1月1日以降に受取る利子については、法人は利子割5%相当額を徴収されることはありません。

これに伴い、法人税割額からの利子割額控除も廃止されます。

利子割は、最初から天引きされていますので、あまり意識していないと思いますが、これまで、黒字の場合は法人住民税から利子割額を控除し、赤字の場合は利子割相当額の還付を受けていました。

これらの還付や充当するための各自治体の事務負担がなくなりますし、数円程度の還付額に数百円の振込手数料がかかることもなくなります。

法人の税負担は変わらずに、経費(=税金)の削減につながる良い改正だと思います。

ただし、法人限定ですので、個人からの徴収は引き続き行われます。


2016年03月23日

日本における難民認定申請の現状

各国での難民受け入れと課題

内戦が続くシリアからの難民受け入れが課題になり、世界では積極的な受け入れを求める声が高まっていましたが、フランス・パリでのテロ等を受け、各国で難民申請に関し慎重な対応を取らざるを得なくなってきました。

しかし、テロ以前は日本でも難民の受け入れに協力的であったかというと、決してそうとは言えません。

そもそも日本の難民認定制度は、他国と比較して圧倒的にハードルが高いのが実情なのです。


日本で「難民認定」は難しい

「難民」とは、「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、または、政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないか、または、それを望まない者」とされています。

難民として認定されるためには、この定義に当たることを申請者自らが書面等の証拠や証言により立証することを求められます。

しかし、実際のところ、「迫害を受けるおそれがある」ことを、書面で立証することが極めて重要な日本の運用では、この認定に足る十分な証拠資料を集められるケースはごく稀です。

平成26年度は申請が5,000件、処理数は3,169件に上りましたが、このうち難民と認定されたのはたった11件と、1%にもなりませんでした。


それでも申請件数は右肩上がり

ほとんどが認定されていないにもかかわらず、実は5年前の平成22年から申請件数自体は5倍近くにも跳ね上がっています。

その要因の一つとされているのが、就労を目的とした偽装申請の存在です。

平成22年3月の運用改正後、正規在留中の者が難民認定申請を行った場合については、一定期間経過後一律に就労を許可するようになったことで、就労を目的とした申請が増えたと指摘されています。

しかしこれでは認定審査が長期化し、本来救済されるべき案件に支障をきたしてしまいます。

こうした事態を受け、法務省では平成27年9月、就労しなくても生計維持が可能と判断される者や、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返す再申請者については、申請に対する判断がされるまでの間、在留は許可するが就労は許可しない方向に運用を見直すこととしました。

難民については非常にデリケートな課題ですが、こうした現状があることは知っておく必要があるかもしれません。


2016年03月22日

プロスポーツ選手の所得区分

プロ野球選手は「個人事業者」

プロスポーツ選手は皆「個人事業者である」という印象が強いと思います。

プロ野球選手の場合は、昔の通達(現在は廃止)で、選手は球団の指定する試合に出場することを約し、出場契約料・試合契約料を受けるもので、選手の技能や人気の高低により出場料が変わってくるとなると、一般芸能人の出演契約と変わらないものとして事業所得とされてきたことから、現在でも同様の取扱いが行われています。

プロ野球選手の所得区分


事業所得

①契約金

②参稼報酬(年俸のこと)

一時所得

後援会等の法人から受ける祝儀等


相撲力士の場合は「給与所得者」

他のプロスポーツ選手の所得区分は、所属団体との従属性が強いか、弱いかにより取扱いが変わってくるケースがあります。

たとえば、相撲力士の場合には、日本相撲協会に対する従属性が強いため、個別の通達により、日本相撲協会から支給されるものは給与所得とされています。

その他の収入の所得区分は次のとおりです。

相撲力士の収入の所得区分

給与所得

日本相撲協会から支給される給与収入


事業所得

①懸賞金

②優勝賞金・副賞金品

③引退興行の収益金


一時所得

後援会等の法人から受ける祝儀等


退職所得

①現役引退時に日本相撲協会から支給される養老金・勤続加算金

②特別功労金(横綱・大関)

事業所得と給与所得の区分の難しさが反映

事業所得と給与所得の区分は「従属性」や「独立性」等から判定されますが、実際には判断が難しいケースが多々あります。

たとえばバイオリニストは高度な技量をもつため、プロ野球選手と同様に取り扱われるものとも考えられますが、過去の判例では、楽団への従属性が強いものとして給与課税を認めたケースもあります(日フィル事件)。

2016年03月18日

役員退職金算定の「功績倍率法」

功績倍率「2~3倍」で大丈夫か?

「役員退職金をどのぐらい支払えばよいか?」というのは実に悩ましい問題です。 

一般的には、役員退職金の算定方法は、「功績倍率法」(退任時報酬月額×在任年数×功績倍率)や「1年当たり平均額法」などで求められます。

法人税法では、役員退職金は「不相当に高額」ならば、過大役員給与として損金不算入となります。

会社が「不相当ではない金額」を決めようとする場合、「その法人に従事した期間」や「類似法人(業種・規模など)の役員退職給与の支給状況」などを総合勘案する必要があるとされています。

過去の判例(昭56.11.18など)から、功績倍率法の場合、おおむね「2~3倍」(平取2倍・社長3倍)の範囲ならば大丈夫ではないかといわれていました。

全国統計から抽出した功績倍率は使えない

平成25年の東京地裁の判例では、国税側が示した平均功績倍率1.18倍で算定した約490万円を適正なものとして、納税者が個別事情を加味して支払った退職金6,032万円のほとんどを否認しています。

判示された項目の一つに、功績倍率を選定する抽出法人が適当でないという点がありました。

これは納税者が任意団体の公表する全国の役員退職金データ(全国7,320社、役員8,454人)から抽出した4法人を用いて適正功績倍率「3.0倍」と算定したところ、国税側の示した3法人より「対象地域」「業種の類似性」の点で劣るとして退けられたものです。

「功績倍率法では、同業類似法人データの抽出基準」がポイントであるということですが、国税側はこのような情報にアクセスが容易な一方で、一般納税者が入手することは極めて困難なものといえます。

「シークレット・コンパラブル」と同じ問題

似たような話が国際税務の世界でもあります。

移転価格税制の調査では、独立企業間価格の算定に必要な資料が納税者から出されない場合、国税側が質問調査権を行使して入手した競合他社の情報を基に推計課税を行うことがあります。

この課税の根拠となる比較対象企業は、守秘義務の観点から納税者には知らされないため「シークレット・コンパラブル」と呼ばれています。

納税者は、どこの企業か分からなければ、本当に自社と比較できるものであるかも分からないので、反論のしようがないわけです。

2016年03月17日

財産債務調書の提出

今年も3月15日が過ぎ、平成27年分の所得税確定申告書の提出もひと通り終了しました。

平成27年分の確定申告から新たに提出が開始されたものに、「財産債務調書」があります。

従来の「財産及び債務の明細書」に代わる書類となります。

提出対象者は、所得税等の確定申告書を提出しなければならない方で、その年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2千万円を超え、かつ、その年の12月31日において、その価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産を有する方になります。

財産債務調書には、提出者の氏名・住所(又は居所)に加え、財産の種類、数量、価額、所在並びに債務の金額等を記載することとされています。

期限内に提出した場合と、提出がない場合には、次のように加算税等が加減される措置があります。


① 財産債務調書を提出期限内に提出した場合

財産債務調書に記載がある財産または債務に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときであっても、過少申告加算税等が5%軽減されます。


② 財産債務調書の提出が提出期限内にない場合または提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産または債務の記載がない場合

その財産または債務に関して所得税の申告漏れ(死亡した方に係るものを除く)が生じたときは、過少申告加算税等が5%加重されます。


基準を満たす提出対象者が、この財産債務調書を提出していない場合には、税務署から文書等による通知が行われるようです。

ただし、この通知を受けた後に財産債務調書を提出した場合でも、期限内に提出されたものとみなし、過少申告加算税等が5%軽減を適用できる見込みです。

該当しそうな方で、まだ提出していないという方は、早めにご確認ください。

2016年03月16日

残業削減の取り組み

独立行政法人労働政策研究・研修機構が従業員100人以上の企業約2500社から回答された調査の結果、最近過去1年における1か月当たり所定外労働時間は平均24.5時間でした。

また、過去1か月当たり45時間超えの所定外労働時間労働を行った正社員が1人でもいた企業の割合は76.5%で、60時間超えが61.4%、80時間超えは39.9%でした。

これらの時間超えの多かった業種は「建設業」「製造業」「情報通信業」「運輸業・郵便業」「学術研究、専門、技術サービス業」でした。

今後の方向性

上記の企業に年間総労働時間の今後の方向性について聞くと「現状の通りでよい」の回答は49.2%、「短縮してゆく」は45.7%でした。

エン・ジャパンが2014年に行った調査では「業務分担やフローの見直し」「管理職への教育」「残業の事前申請制」の3つが実施効果のあったものとされています。

これらは「経営トップからの呼びかけや経営戦略化よる意識啓発」、「所定外労働の事前届出制の導入」、「仕事の内容・分担の見直し」で、経営戦略として残業削減に取り組むことが効果的であると言えるでしょう。


残業時間削減に効果のある取り組み方

先の機構の調査結果では、実施した企業で所定外労働時間の短縮効果が高かったのは「強制消灯、PCの一斉電源OFF」「経営トップからの呼びかけ」「経営戦略化による意識啓発」「社内放送や終業ベル等の呼びかけ」「労働時間管理や健康確保にかかる管理職向けの研修・意識啓発」等の取り組みとなっています。

50人以上事業場のストレスチェック制度実施も始まり、労働者の健康管理にさらに気を配る必要が出てきました。

また、労働基準法の改正の動向も中小企業でも残業時間月60時間超えの場合に割増率を5割にする案が出ていますし、年次有給休暇のうち年5日を強制取得とする案も挙がっています。


2016年03月15日

労使コミュニケーションの実態

厚生労働省が昨年発表した「平成26年労使コミュニケーション調査」は、労使間の意思の疎通方法やその運用状況等事業所と労働者の意識の実態を調査したものです。

全国約5,500事業所で常用労働者数30人以上事業所と、そこに雇用される労働者約6,400人を対象にしたものです。

労使関係の維持について労使の認識差

「労使関係は安定的に維持されている・概ね安定的に維持されている」と回答した使用者側は86.9%で「どちらとも言えない」は9.7%、「やや不安定または不安定」は1.6%でした。   

一方労働者側の回答は「良好」は55.1%であり、「どちらとも言えない」は33.5%、

「悪い」は11.3%となっています。

ここでは両者のギャップが見えます。

重視する労使コミュニケーションは

「どのような面で労使コミュニケーションを重視するか」(複数回答)の問いには使用者側は1位「日常業務改善」75.3%、2位「作業環境改善」68.5%、3位「職場の人間関係」65.1%となっています。

一方労働者側は1位「職場の人間関係」62.6%、2位「日常業務改善」53.2%、3位「作業環境改善」49.9%でした。

労働者の処遇に関する項目

労働者個人の処遇について不平不満を事業所に訴えたことがある労働者は16.5%でその方法は、直接上司へ78.2%、労働組合等18.0%となっています。

その内容は「日常業務の運営に関すること」53.9%が最も多く「人事(配置、出向、昇進等)に関すること」40%、「労働条件に関すること」39.8%が続いています。

不満を伝えた結果、「納得のいく結果が得られた、検討中のようだ」は38.1%、「得られなかった」が49.9%となっています。

調査結果を見ると不平・不満は黙っていることも多く、話してもしょうがないと思っているふしも見受けられます。

使用者側でも社員の意見を十分取り上げる事は難しいものです。

しかし労使のコミュニケーション疎通を図るためには、対話を進めることは避けられません。


2016年03月14日

マイナンバー制度の法人番号

法人番号とは

マイナンバー制度では、国民一人一人に付与される個人番号の他に、会社法等によって登記された法人や団体、国の機関等に新しく「法人番号」が指定されています。

法人番号は一法人に対して一番号が指定されます。

法人の支店、営業所等や個人事業者には指定されません。

法人番号は株式会社等に指定される13桁の番号で公表され、誰でも自由に利用することができます。

何に利用するのか

法人番号自体には利用目的の制約はありません。

行政分野では平成28年からは税分野の手続において利用されることになっています。

例えば法人税の申告の場合、平成28年1月以降に開始する事業年度にかかる申告から、法人番号を記載することになっています。   

公表される情報は商号または名称、本店または主たる事務所の所在地、法人番号の3つの基本項目です。

また、法人番号の指定を受けた後に、商号や所在地の登記情報に変更があった場合には公表情報を更新するほか、変更履歴も併せて公表されます。

自社の法人番号だけでなく法人番号情報サイトで他社の法人番号や名称、所在地情報を検索し、情報内容の入手(ダウンロード)ができるようになります。

法人番号は原則自由利用ができるので、利用方法として例えば「法人番号指定年月日」で絞り込みを行って新設法人等を抽出することも従来より効率的になり、新規営業先等に利用する等が考えられています。

法人番号の通知・公表

行政機関同士で情報連携が図られ行政手続における届出・申請のワンストップ化が進めば、手続も簡素化されるでしょう。企業側の事務にかかるコスト軽減になるかもしれません。

一方で各機関が切り離されていた時には分かりにくかった会社情報が行政機関間で連携されると、会社にとって思わぬ影響が生じることがあるかもしれません。

法人番号は既に平成27年10月より指定され通知されています。下記、法人番号公表サイトに掲載されています。

http://www.houjin-bangou.nta.go.jp/


2016年03月11日

通帳のマメな記帳をお願いします

マメに通帳の記帳は行いましょう

いよいよ確定申告の季節になりました。

会計事務所では、青色申告を行うクライアント様からは預金通帳のコピーなどを頂戴します。

受け取った通帳で意外と多いのが、「合計記帳」や「未記帳分合算」などの記載です。

これらは金融機関により呼び方は異なりますが、一定の期間、一定の件数を超える場合に、取引ごとの明細を通帳に記入せず、まとめて記帳されるものです。

最近はネットで入出金や残高の確認をする方も増えているので、お忙しい方は、銀行に記帳に行く機会も減ってきているかもしれません。 

都市銀行の「合計記帳」の呼び方

        摘要記載 基準日・条件等

みずほ  未記帳分合算 年4回・100件以上

三菱東京UFJ 合計記帳 年2回・一定数以上

三井住友 おまとめ記帳 年2回・100件以上

りそな 一括 年2回・30件以上

この「合計記帳」になっていると、確定申告の所得計算に必要な会計帳簿を作ることができません。

そのため、「合計記帳」部分の明細のお取り寄せをお願いすることになります。

大抵の場合、無料で取引明細は入手できますが、1週間ぐらいかかることもあります。

「しまった」ということにならないよう、マメに通帳は記帳しましょう。

「通帳レス」も登場していますが…

もっとも、都市銀行でも最近は、取引明細をすべてパソコンや携帯で確認を行う通帳不発行型の預金口座も登場しています。

都市銀行の「通帳レス」預金口座

     名 称 保存(最大)

三菱東京UFJ Eco通帳 2年分

三井住友 Web通帳 15か月分

りそな TIMO 13か月分

これらの口座は、金利や手数料の優遇をするものもありますが、取引明細の閲覧期間があり、それを過ぎるとデータを見ることができなくなります(ネット銀行の場合でも、同様の閲覧期間制限を設けているところもあります)。

データを保存する習慣がない方は、昔の記帳内容を見る場合は、「合計記帳」の手続きと同様、金融機関から取引明細を入手することになります(この場合は、所定の手数料等が必要です)。

通帳レスの口座やネット銀行の口座でも、定期的にデータ保存や取引明細を印刷しておくことをおススメします。


2016年03月10日

教育資金口座からの払出について、領収書をまとめて提出する場合の注意点

「教育資金贈与信託」払出しは1,205億円

一般社団法人信託協会によれば、平成27年9月末現在の「教育資金贈与信託」の契約数(累計)は141,655件(信託財産設定額(累計)9,639億円)となっているそうです。

この信託財産設定額9,639億円のうち、すでに1,205億円が教育関連費用として払出しされたそうです。

1,205億円相当の金額が教育に消費されるとともに、贈与を受けた親権者の世帯の家計に余裕ができたと思えば、その効果は大きなものといえます。

口座からの払出し-2つの領収書提出方法

信託に限らず、銀行、証券口座に「教育資金」の贈与税非課税口座を作った場合の「教育資金」の払出しは、どちらも取引金融機関の営業所等に領収書等を提出する方法で行われます。

この領収書等の提出方法は次の2つの方法から選択することができます。


①教育資金を支払う都度提出する方法(期限:領収書記載の年月日から1年を経過する日まで)

②1年分をまとめて提出する方法

(期限:支払年の翌年3月15日まで)

(提出方法を選択した後は、その後において変更を行うことができません)。

①の「教育資金等を支払う都度提出」する方法では、教育資金を支払った後に、教育資金等の口座から払い出すという順番となりますが、②の「1年分をまとめて提出」する方法では、「教育資金の支払い」と「口座からの払出し」の時期の前後は問わないこととなっています。


まとめ提出の場合、12月「払出し」は注意!

ここで、②の「1年分をまとめて提出」する方法の場合、「その年中に払い出した金銭の合計額」が、「提出された領収書等の金額の合計額」を超えるときは、取扱金融機関が記録する教育資金支出額は、「その領収書等の金額の合計額」が限度となります。

例えば、受贈者が12月に金銭の払出しを行い、その金銭を1月に教育資金の支払いに充てた場合には、金銭の払出年と領収書等に記載された支払年が、同一年中とならないことから、その領収書等を3月15日までに提出したとしても、12 月に払い出した金銭は、それに見合う同一年中の領収書等の金額がなく、教育資金支出額として記録されないこととなってしまいます。

2016年03月09日

雇用保険65歳以上の新規加入が可能になりました

65歳以上の方でも新規加入ができるように

厚生労働省は来年度から65歳以上の高齢者も新規に雇用保険に加入する事ができるようにする方針を固めました。

高齢者の雇用を拡大して行く方向で通常国会に改正案を提出する予定です。

65歳前からの継続雇用者との不公平感

現行の雇用保険制度は、失業した時に65歳未満であれば賃金の45%~80%相当額を最大360日受け取ることができ、65歳以上の場合には最大50日分の一時金を受け取る事ができます。

しかし、65歳以上で転職したり、関連会社に転籍して異動したりした時などは新規に雇用保険の加入ができません。

したがって一時金給付も受け取ることができません。

現在65歳以上の雇用保険加入者は150万人近くいると言われています。

新規加入を認めれば転職した人達等の不公平感は是正されるでしょう。

転職や再就職も失業給付の対象に

改正後の雇用保険の加入には年齢制限を設けず、65歳以上の退職者には「高年齢求職者給付金」として65歳前から継続して同じ事業主の下で働いていた人と同様に失業前に受け取っていた賃金の最大50日分が支給されます。

ただし、加入には「週20時間以上の労働時間」が、失業給付受給には「直近1年のうち6か月以上の被保険者期間」が必要です。

65歳未満の失業給付は現行のままの予定です。

65歳以上で加入した人の保険料は当面は労使とも免除されます。

現在も64歳を超えて雇用されている人の保険料は免除されているのと同様の扱いです。

人手不足や求職者の増加が背景に

高齢化の進展で働き続けたい人の割合が増えており、企業側も人手不足感から高齢者を受け入れる方向に動いています。

厚労省は安易に受給者を増やさないように、給付を申請する65歳以上の方が実際に求職活動をしているかなどを厳しく確認するとしています。

この他、介護休業を取る人への給付金を現在の賃金の40%水準から67%に引き上げる方針です。仕事と家庭の両立を支援していく方向です。


2016年03月08日

中小企業退職金共済の(中退共)制度改正

退職金のポータビリティ範囲の拡大

中小企業退職金共済法(中退共)の一部が平成28年4月より改正されます。

今回の改正は勤労者退職金共済機構における資産運用のリスク管理体制を強化し、制度のポータビリティの向上等を通じた事務、事業の見直し、加入者の利便性の向上等を盛り込んでいます。

改正の内容は

1. 資産運用のリスクの管理体制の強化のため勤労者退職金共済に厚労省大臣が任命する委員から構成される「資産運用委員会」を設置し資産運用の重要事項にかかる審議等を行う。

これについては先んじて平成27年の10月から施行されています。

2. 制度のポータビリティの向上を通じた事務、事業の見直し


①特定退職金共済事業からの資産移換・・・特定退職金共済事業を廃止する団体から事業主単位で中退共制度への資産移換を可能にする。


②確定拠出年金制度(DC)への資産移換・・・中退共に加入している事業主が中小企業者でなくなった場合、事業主単位で中退共制度から確定拠出年金制度(DC)(企業型)へ資産移換する事を可能にする。


③制度間通算における全額移換の実施・・・中退共制度と特定業種退職金共済制度間等の通算について、通算できる金額の上限を廃止する。


④企業間通算の申し出期間の延長・・・中退共に加入している従業員が転職等により中退共制度間等を移動した場合、通算の申し出期間は現行の2年以内から3年以内へ延長する。


⑤建設業退職金共済制度の退職金の支給方法の見直し・・・退職金が支給されない掛け金納付期間を現行の24月未満から12月未満へ短縮する。


⑥未請求退職金発生防止対策強化・・・勤労者退職金共済機構から住基ネットを活用して退職金未請求者の住所の把握を行えるようにする。

以上のように加入者にとっても利便性が向上する措置が盛り込まれました。

2016年03月07日

住基カード利用者はご注意

ご自身で電子申告される方は要注意!

平成27年分の確定申告については、会計事務所を通じて確定申告をされている方は心配ないのですが、御自身で電子申告(e-Tax)されている方には少し気を付けていただきたい点がいくつかあります。

住基カードの電子証明書が有効期限内の方

e-Taxで申告手続等を行う際には電子証明書が必要です。「住基カード」をお持ちの方については、そのカードに搭載された電子証明書は、有効期間内であれば、引き続きe-Taxでご利用いただけます(昨年のうちに、電子証明書の更新を行った場合には、e-Taxに再登録する必要がありますので、確定申告書等作成コーナーで再登録の方法を確認してください)。

また、新たにマイナンバー制度の「個人番号カード」の交付を受けた場合は、「個人番号カード」をご利用いただくことになります(「個人番号カード」には、電子証明書は標準的に搭載されます)。

この場合、既に「住基カード」の電子証明書をe-Taxに登録している場合であっても、新たに取得した個人番号カードの電子証明書をe-Taxに再登録する必要があります(電子証明書の登録・再登録の方法については、確定申告書等作成コーナーで確認してください)。


住基カードの電子証明書が期限切れの方

その他にもe-Taxを利用されるまでに電子証明書の有効期間が満了してしまう微妙なタイミングの方もいらっしゃると思います。この場合、「住基カード」の電子証明書の更新は、マイナンバー制度の導入に伴い終了していますので、「個人番号カード」の交付申請を行っていただくことになります。

なお、「個人番号カード」の交付申請が集中した場合、交付に時間がかかる旨のお知らせが総務省ホームページに掲載されていますので、申告等の期限に間に合うよう市区町村窓口にご確認の上、早めに交付申請を行ってください。

電子証明書の有効期限の確認方法

電子証明書の有効期限の確認方法は、公的個人認証ポータルサイト「自分の証明書をみる」でご確認できますので、心当たりのある方は早めにご覧になってください。

2016年03月04日

償却方法及び耐用年数と組織再編

包括的承継の個人と法人

個人の相続は包括的承継といわれ、判決では、「償却方法は法令の文理解釈から引き継ぎなし」、「耐用年数は法令の趣旨解釈から引継ぎ」とされています。(最高裁係争中)

法人に関しては、同じく包括的承継といわれる適格合併や会社分割等について、係争になっている事例はないのですが、実務の取扱いはどうなっているのでしょうか。

「移転・引継ぎ」という表現で

「適格合併・適格分割型分割により資産等を移転した場合には、被合併法人の合併直前の帳簿価額による引継ぎをすること」と法令上表現されています。

「譲渡(取得)」という言葉に対する「引継ぎ」との言葉を対置しての使い分けで、法人税法では、適格合併・適格分割型分割のみを包括的承継の性格を有する組織再編と位置づけして立法したように見受けられます。

組織再編の多様性と包括承継

減価償却資産の所有権変動を伴う適格組織再編には、合併・分割・現物出資・事後設立・現物分配があります。

このうち、適格合併・適格分割型分割以外は、簿価引継ぎとしての「譲渡(取得)」という規定なので、取得資産は新品の取得ではなく、中古資産の取得に該当することになります。

従って、中古資産に対する耐用年数の特例が適用できます。

なお、合併は100%の会社分割で、分割型分割は分社型分割と子会社株式現物分配(あるいは株式交換)との組合せで、代替できてしまいます。

それ故か、適格合併・適格分割型分割も、初めは引継ぎ耐用年数のみの適用でしたが、「引継ぎ」も「取得」の一種との解釈となり、今では、他の適格組織再編に対するものと同じ扱いになっています。

包括承継の場合の償却方法の引継ぎ

償却方法の引継ぎがないという点は、法人税でも、個人所得税での相続の場合と同じ扱いのようです。

ただし、法人税には、実質的に償却方法の引継ぎがあるとの公開情報があります。

合併や分割での資産承継法人の引継ぎ取得時期としての過去の時点において、その資産承継法人が選択していた償却方法が、資産引渡し法人と同じならば、その償却方法が適用になるとのことなので、実質的に償却方法を引き継いだと同じ結果になります。

(なお、遡及しての償却方法の選択届も認められています。)

2016年03月03日

償却方法及び耐用年数と相続取得

相続は包括的承継

相続は包括的承継といわれ、相続取得財産は相続人が相続時に取得するのではなく、被相続人の取得時から引き続き所有をしていたものとみなすことになっています。

これを、取得時期、取得価額の承継といったりします。

その財産が減価償却資産のときは、取得時期と原始取得価額と償却累計額と未償却残額を引き継ぎます。

包括的承継の趣旨が、「人格間での権利義務の変動がなかったものと考える」ということであれば、減価償却の他の要素である償却方法や耐用年数も一括して引き継ぐというのが自然なことのようにも思われます。

償却方法も引継ぐべきかは文理解釈で

それで、「建物について被相続人の選択していた定率法の適用が引き継げるべき」と主張して訴訟になった事例がありました。

最高裁まで争われましたが、判決は、取得とは所有権の取得の意であり、相続取得も取得の一種であり、法令で取得時期別の選択可能償却方法の制限をしている以上、相続取得もその定めに服するのは当然との文理解釈を示して、納税者を敗訴にしました。

耐用年数を引継ぐべきかは趣旨解釈で

この判決を承けて、「それならば、償却方法のみならず、耐用年数も引き継げないはずだと判断して、相続取得は中古資産の取得に該当するから、中古資産取得時の耐用年数算定方法が適用できるはず」と主張して訴訟になった事例が次におきました。

裁判は、地裁高裁を経て、現在最高裁に上告されています。

地裁高裁ではいずれも納税者敗訴の判決になっているのですが、こちらの判決は前の判決と異なり、条文の文言を前提とする文理解釈ではなく、趣旨解釈による判決になっています。

法令には取得価額の承継としか書かれてなかったとしても、その趣旨を考慮すると、取得価額承継の文言によって耐用年数、経過年数及び未償却残高についても承継することを予定していると解釈すべきが相当と言えるとしています。

行政も司法も論理無視でよいのか

それぞれの判決を読むとそれなりの論理の一貫性はあるのですが、二つの事例の判決を通貫した論理の一貫性はありません。

2016年03月02日

事業所税の課税拡大

事業所税とは

事業所税は、人口・企業の集中に伴う都市環境の整備のための財政需要の増大に対処するため、1975年度税制改正で市町村の目的税として創設されました。高度経済成長末期です。

当初は政令指定都市など人口50万人以上の都市が課税団体でしたが、その後人口30万人以上の都市とされました。

市町村税とはいっても、町村や一般の地方の市とは無縁な大規模市税です。


対象となる市が増えている

平成の市町村大合併で、大きな地方中核市の周辺の市町村が合併消滅編入された結果として、規模要件を充足する形式上大きな市が増え、課税団体と判定される市が増加しています。

市町村合併特例法により、人口が30万人以上になったとしても少なくとも5年間は課税団体になれないことになっていましたが、その経過期間も過ぎて、新規の課税自治体が増えているところです。


異変が起きている

現在は、東京都の特別区を筆頭に、政令指定都市20市のほか、55市、合計76市が課税自治体になっています。

その結果、まわりは山と田畑ばかりである地域の企業が課税対象地域に含まれることになるという新たな現象が生まれ、突然思いがけない課税が起きることになったという事例が現れています。

事業の拡大の結果の課税ではなく

都市の中に事業所を増やしたので課税されることになったというのが通常ですが、周辺農山村が市に編入されたので農山村部の事業所が課税されるようになる、というのは予定外の事態です。

なお、事業所税の事業所とは、事務所、店舗、工場、倉庫等を指し、自己の所有に属するか否かは無関係で、賃借物件も含まれます。


事業所税の留意すべき問題点

事業所税の免税点は、事業所床面積1000㎡以下、従業者数100人以下で、それを超えると㎡当り600円、給与総額の0.25%という課税が、基礎控除等激変緩和措置のないまま生じます。床面積免税基準を超えると最低でも60万円の納税額となります。

床面積や給与への外形標準課税で、赤字企業でも課税です。

固定資産税や事業税の外形標準課税とも重複性があります。

2016年03月01日

取得費加算の改正

相続税額の取得費加算の改正

平成27年から相続税額の取得費加算の特例制度が改正されています。

この制度は、相続又は遺贈により財産を取得した方に相続税が生じている場合において、その相続税の申告期限から3年以内(亡くなられた日から考えると3年10か月以内)に、相続財産を譲渡したときには、その譲渡所得の控除する取得費に、その譲渡した財産に対応する相続税額を加算し、譲渡所得の課税を軽減するものです。

譲渡所得の計算式

譲渡所得=譲渡収入-(取得費+取得費加算額+譲渡費用)

平成26年までの相続により取得した財産を譲渡した場合には、譲渡した資産を「土地等」と「それ以外」に分けて計算し、「土地等」の改正前の計算式では、譲渡していない土地に対応する相続税相当額も取得費に加算されるため、土地を多く相続して、その一部を譲渡したものは取得費加算額が著しく有利になると指摘されていました。

平成26年12月31日までの相続の場合

たとえば、次のような事例の場合、改正前の計算では次のようになります。

(事例)

相続税の課税価格の合計額:6億円

債務控除:なし

譲渡した者の相続税額:56,600,000円

相続財産のうち土地A:0.6億円

相続財産のうち土地B:2.4億円

で土地Aのみを譲渡したとしましょう。

(平成26年12月末日以前の相続)

相続税額56,600,000×すべての土地の評価額3億円/課税価格の合計額6億円=28,300,000円(取得費加算額)

平成27年1月からの相続の場合

同じ事例で平成27年1月1日以後の相続の場合には次のように計算されます。

(平成27年1月1日以後の相続)

相続税額56,600,000×譲渡した土地の評価額0.6億円/課税価格の合計額6億円=5,660,000円(取得費加算額)

改正前の数字とは、取得加算額がかなり変わることがわかります。

平成27年に開始した相続については、ご注意ください。


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