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2013年08月 アーカイブ

2013年08月30日

確定日付

金銭消費貸借契約書、売買契約書、贈与契約書などの契約書や覚書、通知書等、世の中で飛び交う書類の中には、権利の有無、移転、変更といった重要な情報が記載されているものがあります。

そのため、「作成日を改ざんした」、「さかのぼって作成した」等、後々になって揉め事のもととなってしまうことがあります。

そのような事が起こらないように、確定日付というものがあります。

確定日付とは

確定日付とは、変更のできない確定した日付のことであり、その日にその文書が存在していたことを証明するものです。

確定日付のある文書には、例えば、公証人によって文書の存在が証明されたもの(確定日付証書)、郵便局で「誰が、誰宛てに、いつ、どんな内容の手紙を出したのか」を証明したもの(内容証明郵便)などがあります。

確定日付は、公証人や郵便局等が文書を証明した日にはその文書が存在していたという法律上の証拠ですので、紛争に対して一定の抑止力となるわけです。

なお、確定日付は、文書の内容が適正かどうかまでを証明するものではありませんので、ご留意下さい。


確定日付の付与

公証人の場合は、公証役場で手続きをします。

管轄はありませんので、どこの公証役場でも手続きできます。

確定日付の付与を受けたい文書を持っていくと、公証人が、その文書に公証人名の入った日付印を押捺して付与します。

なお、確定日付が受けられる文書は、私文書に限られます。

作成者の署名・押印のない文書、文書のコピー、写真や図面そのものには、基本的に確定日付を付与することはできません。

また、当然ですが、内容が違法・無効な文書や犯罪に使用されるおそれのある文書にも、確定日付を付与することができません。

一方、内容証明郵便は、郵便局で手続きをします。

手紙とはいえ、一般の手紙とは違い、法律で形式が決まっていますので、作成を検討されている場合はご注意下さい。

2013年08月29日

所有権移転外ファイナンスリースの経過措置

平成26年4月1日から消費税の税率8%アップが予定されています。

消費税の税率改正時において、いつも問題となるのは施行日前後の税率の適用関係です。

例えば、施行日前に契約したものについて、資産の引渡しまたは役務の提供が施行日以後になる場合には、新旧いずれの税率が適用されるのか、また、深夜営業の店舗売上等については、施行日の午前零時をもって新税率の切替が必要になるのか等種々の問題が生じます。

前者については、取引の特性に応じて経過措置規定を設け実務に混乱が生じないよう配慮しています。

また、後者について言えば、新税率の切替の必要はなく、日々行われている売上レジの締め時間に合わせることで実務上問題ないとされています。


資産の貸付けに関する経過措置

経過措置は、取引の特性をおおむね11類型に分けて規定が置かれていますが、事業者にとっては主に、

①工事の請負に関するもの

②資産の貸付に関するもの

③役務の提供に関する経過措置

について注意が必要かと思われます。

特に、資産の貸付に関する経過措置につては、再度、その内容を確認する必要があります。

というのいうのも、所有権移転外ファイナンスリース取引(以下「ファイナンスリース」)は、平成9年時の税率アップの際には資産の貸付として、経過措置の適用がありました。

しかし、平成19年度の税制改正で平成20年4月1日以後契約のファイナンスリース取引については、リース資産の引渡しがあった時に、当該資産の売買があったものとして処理さることになりました。

この改正により、ファイナスリースは、今回の資産の貸付に係る経過措置の対象外となっていますので、施行日前の目的物の引渡しがされているものについては、施行日前に行われた資産の譲渡として旧税率が適用されることになります。


仕入税額控除と会計処理

リース資産については、本来、リース資産の引渡しを受けたに日に資産の譲受があったものとして、仕入税額控除の計算をします。

しかし、賃借人が賃貸借処理をしている場合については、そのリース料の支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとする処理、いわゆる分割控除も認められています。

従前通りの取扱です。

2013年08月28日

婚姻費用

夫婦が離婚をするまでのお話です。

婚姻費用とは、夫婦が生活を維持していくのに通常必要な費用のことであり、居住費や食費や子の養育費などを含みます。

実務家の間では「コンピ」と呼ばれています。

この婚姻費用は、「資産、収入その他一切の事情を考慮して」夫婦で分担しなければならないと定められています(民法760条)。

夫婦が同居している場合には、家計が一緒であることから婚姻費用の分担は問題にならないのですが、夫婦が別居した場合には婚姻費用の問題が顕在化します。

別居中の妻から夫に対して婚姻費用の分担を求めて請求するケースが多いと思います。

婚姻費用の負担能力に応じて分担する義務がありますから、共働きであるからと言って支払義務が免除されることはありません。

もちろん、別居に至った理由や収入差によっては、子の養育費の部分を除いた一方配偶者の生活費の部分の全部又は一部の婚姻費用が認められないこともあり得ます。

別居中の夫婦の話し合いによって婚姻費用分担の合意ができればいいのですが、中々合意に至らない場合もあるかと思います。

そのような場合には、家庭裁判所に婚姻費用分担請求の家事調停申立てが必要になります。

調停での話し合いで決着がつかない場合には、家事審判で金額が決定されます。

婚姻費用の金額は、夫婦の収入や子供の人数その他を考慮して決定されます(一般的には「婚姻費用算定表」を用いて算出されるのが実務の運用です)。

婚姻費用は請求した時から認められるのが裁判所の考え方です。

ですから、別居を開始したら速やかに婚姻費用は請求した方がよいでしょう。

ただし、過去分の婚姻費用の請求が全く認められない訳ではなく、離婚の際の財産分与の一事情として考慮されることもあります。

離婚が成立した場合には、離婚後の元配偶者の生活費を分担する義務はありませんので、婚姻費用の支払義務はありません(ただし、未払いの婚姻費用の債務は残ります)。

お子さんがいる場合には、お子さんの養育費の支払義務が離婚後に新たに発生します。

様々な事情でやむを得ず離婚に至るかと思いますが、想像以上に離婚に伴う諸手続きは大変だと思います。

家庭円満が一番ですね。

2013年08月27日

消費税増税 指定日・施行日へ向けた対応

消費税率の引き上げか、取りやめかの判断が10月中旬には下される見込です。

消費増税法には、景気悪化時に増税を停止できる「景気判断条項」が存在するため、首相が凍結する可能性も指摘されています。

ただし、工事の請負契約など、経過措置の指定日が平成25年10月1日と迫ってきているため、各種の経過措置の適用がある取引か否か、検討・判断することが必要となります。

「指定日」までの契約・「施行日」前の購入

請負契約や資産の貸付けなどについては、平成25年10月1日の「指定日」前までに締結した契約で一定の要件を満たすものは、26年4月1日の「施行日」以後の引渡し等について旧税率5%が適用されます。

税率の引上げに対応するうえでは、経過措置の適用を考慮して、指定日の前までに契約をするべきかどうか、契約を見直して契約内容の変更を申し出るかなど、検討が必要な場合があるでしょう。

また、指定日に間に合わない場合や、経過措置の対象でない取引の場合には、新税率8%が実施される施行日前までに資産の取得を行うかどうかなど検討することが必要です。

原則的な取扱い

すべての取引が経過措置の対象になるわけではありません。

経過措置の対象とならない取引は、その取引の契約日に関係なく、原則、資産の譲渡等を行った日又は課税仕入を行った日が、平成26年3月31日までの場合は旧税率5%、平成26年4月1日以降の場合は新税率8%の税率を適用します。

例えば、3月31日までに仕入れた商品を、4月1日以降に販売する場合には、仕入時には旧税率5%を適用し、販売時には新税率8%を適用します。

経過措置の適用

平成26年4月1日以降の完成引渡しを行うもので、請負契約等の経過措置の要件を満たしている場合には、必ず旧税率5%を適用しなければなりません。

事業者が任意で新税率8%で、消費税額の計算をすることはできません。


とくに中小企業にとっては事務負担の大きい消費税ですが、税率が変更となる場合には、いつもと違う事務処理が必要となってきますので、適用を誤らないように準備していきましょう。

2013年08月26日

「資本性借入金」とは

話題に上るようになった「資本性借入金」
最近、「資本性借入金」に関する話題が増えてきました。

この借入金は銀行が融資先の財務状況を判断する際に、負債ではなく、資本とみなすことができます。

H16に金融庁の「金融検査マニュアル」に盛り込まれたものですが、H23.11「資本性借入金の積極活用について」で、その「資本性」の要件を明確化したことにより活用が増えてきました。


「資本性借入金」の「資本性」の要件

「資本性借入金」の「資本性」とは「長期間償還不要な状態」「配当可能利益に応じた金利設定」「法定破綻時の劣後性」により、その借入金が資本に準じた体裁を備えていることをいいます。具体的には、

①償還条件 

償還期間が5年超の期限一括償還


②金利設定

原則として業績連動型(赤字の場合、事務コスト相当)


③劣後性

原則として無担保・無保証(担保解除が困難な場合には特例あり)。


とされています。

政策金融公庫の「資本性ローン」がその一例となります。

ただし、この「資本とみなす」というのは、金融検査上のルールであって、私法・会計では、「債務」・「借入金」であることには変わりません。

中小企業金融円滑化法の終了後は、リスケ応諾率も下がり、経営計画の達成度も厳しいチェックが行われるものと思われます。

リスケの適用を受けた企業は「実現性の高い抜本的な経営再建計画」(実抜計画)では5年後には債務者区分を「正常先」(債務超過解消と黒字化)となることが求められています。

この場合、既存の借入金を「資本性借入金」に組替えるプランを採りいれれば、債務超過が解消しやすくなり、計画の実現性が高まります(返済は5年以後の一括であり、資金繰りにも貢献します)。

ただし、「実抜計画」に準ずる「合理的かつ実現性の高い経営改善計画」(合実計画)では、概ね計画どおりに進捗し、10年内の償還が求められることから、計画・実績とも黒字を出し続けるという前提となります。

債務超過であっても利益は出し続ける―ハードルは高いですが、そのようなリスケ企業であれば活用したいスキームです。
 

2013年08月23日

レジャークラブの入会金等

社員の福利厚生の目的で、テニスクラブやフィットネスクラブ、保養施設の会員となる場合があります。

入会すると、当然入会金・年会費などの費用を支払いますが、誰が入会し、誰が利用するかで処理の方法、勘定科目が異なります。


入会者

レジャー施設の場合、会員制度には個人会員と法人会員がありますが、必ず法人会員で入会しましょう。

法人会員があるにもかかわらず個人会員で入会した場合には、その入会した個人に対する給与となり、所得税が課せられてしまうからです。

ただし、法人会員制度がなく、やむを得ず個人会員で入会した場合は、この限りではありません。


利用者

社員の福利厚生目的でレジャー施設の法人会員となったなら、従業員全員が分け隔てなく利用できるようにしておく必要があります。

こうすれば、年会費は福利厚生費として費用計上できます。

また、入会金は資産として計上でき、退会時に返金されない場合は減価償却によって費用計上することができます。

施設の利用者を、役員や特定の社員に限定してしまうと、入会金も年会費もその施設の利用者に対する給与となり、所得税が課せられることになります。

取引先の接待などに使えば、交際費になります。

利用者や使途に応じて、適切な処理を行いましょう。


注意点

福利厚生施設の利用規程、予約簿、利用実績簿などの書類を作成し、客観的に役員・従業員が分け隔てなく利用していることが分かるよう、社内環境を整えておきましょう。

2013年08月22日

相続税の葬式費用の取扱い

最近書店では「エンディングノート」や「遺言書の書き方」などの書籍が目につきます。

相続の話題ばかりでなく、葬儀やお墓、お寺の情報やマナー等にも関心が高いようです。

近年の傾向としては、「直葬」「家族葬」などこぢんまりとした葬儀も増えているそうで、付き合いが希薄となった時勢やライフスタイルの多様化を反映しているのかもしれません。

相続税では葬式費用は日本の慣習上、必然的に発生するものであり、国民感情も考慮して相続税の課税価格から控除することとされています。

ただし、その控除の範囲は故人を弔うセレモニーの費用に限られ、追善供養にための営まれるもの(例 初七日法会)の控除は認められておりません。


告別式を2回に分けて行った場合

「お葬式」は、宗教や地域的習慣によりその様式が異なるため、何が葬式費用であるかの判定が極めて難しいケースがあります。

個々に社会通念に即して判断すべきところですが、名古屋国税局の文書回答事例「告別式を2回に分けて行った場合の相続税の葬式費用の取扱いについて」(H22)が国税庁HPに掲載されています。

この事例では、故人の亡くなられたA市と、親族や幼馴染みに見送ってもらうため、故人が生まれてから就職まで過ごしたB市の2箇所で告別式を行ったというものです。

【日程】

 H22.3.□ A市で通夜

 H22.3.△ A市で告別式(式の後、火葬)

 H22.3.△+4日 B市で告別式

 H22.5.○ 納骨

この2回の告別式の費用とも相続税の課税価格から控除することができるのか―というのが照会の趣旨です。

国税はこの事例に関しては、両方とも控除できると判断しました。

A市の告別式が「死者を弔う儀式」であることは勿論のこと、B市の告別式も、参列が困難な知人等の便宜を考慮して、遺族の意思により別途行われたもので、内容も遺影・遺骨を祭り、読経・焼香を行った死者を弔う儀式であり、追善供養のための法会(法事)ではない―との見解を示しました。

経緯・内容・金額をみての総合判断のようです。

2013年08月21日

消滅時効の期間

債権を有していても債務者に対して何もせずにそのまま一定期間が経過すると、時効により債権は消滅してしまいます。

時効制度の存在理由は、

①長期に継続した事実状態を尊重し法律関係の安定を図る。

②権利の上に眠っている者は保護する必要がない。

③立証の困難を救済する。

が挙げられます。


消滅時効の起算点は「権利を行使することができる時」です(民法166条1項)。

具体的には権利行使に法律上の障害がないことを意味します。

例えば、当事者間で売買代金の分割払いの合意がある場合には、債務者は期限の利益を有しますので、法律上権利行使をすることができるのは分割払いの期限が到来した部分のみとなります。

では、債権が消滅する時効期間は何年でしょうか。

債権の消滅時効の原則は10年です(民法167条1項)。

ただし、商行為によって生じた債権の消滅時効は5年です(商法522条)。

例えば、会社が個人に対してお金を貸した場合のその貸金返還請求権の消滅時効は5年になりますが、

友人が個人に対してお金を貸した場合のその貸金返還請求権の消滅時効は10年になります。

債権の種類によっては、以下のように短期に消滅時効にかかる債権もあります。


3年の短期消滅時効(民法170条)

①医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権

②工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権

2年の短期消滅時効(民法172条、173条)

①弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権

②生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権

③自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権

④学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権

1年の短期消滅時効(民法174条)

①月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権

②自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権

③運送賃に係る債権

④旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権

⑤動産の損料に係る債権


借金の消滅時効は10年(又は5年)ですが、小売店から購入した商品代金(2年)や飲食店の飲食代金(1年)などの日常生活上の債権の多くは短期消滅時効が適用されます。

債権者の場合には、有する債権が消滅時効に掛からないように管理することが重要です。

長期間にわたり未回収の売掛金等の債権がありましたら、一度、消滅時効が完成する日を確認してみては如何でしょうか。

2013年08月20日

中小企業向けの研究開発税制

研究開発税制というと、試験研究費の額が大きい大企業向けのイメージがありますが、中小企業でも適用することができます。

研究開発税制は、次の4つの制度から構成されています。

①試験研究費の総額に係る税額控除制度

②特別試験研究に係る税額控除制度

③中小企業技術基盤強化税制

④試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度

このなかで、中小企業者の試験研究費の額の一定割合を法人税額から控除する「③中小企業技術基盤強化税制」は、中小企業者向けの制度として比較的、利用しやすいものとなっています。


中小企業技術基盤強化税制の特別控除額

試験研究費の額×12% 又は 法人税額×30% のうちいずれか少ない金額

ほかの試験研究費の特別控除制度は、適用要件の判定や税額控除額の計算が少し複雑ですが、中小企業技術基盤強化税制は、試験研究費の額に12%を乗じるだけで計算ができ、簡単です。

また、上記①、②とは重複適用できませんが、税額控除額は基本的に中小企業技術基盤強化税制の方が有利に計算されるように設定されていますので、試験研究費がある中小企業にとっては、有効な制度となっています。


試験研究費とは、製品の製造または技術の改良、考案もしくは発明にかかわる試験研究のために要する費用で、①~④が該当します。

①試験研究を行うために要する原材料費、人件費および経費

②試験研究のために外部に支払う委託研究費

③技術研究組合に支払う賦課金

④試験研究のために使用する減価償却資産の減価償却費

上記以外にも、企業、大学、公的研究機関などとのいわゆる産学官連携による共同研究や委託研究の費用も対象になります。

税額控除の対象となるのは、上記の費用のうち、法人税法上の損金となるものに限られます。

従って、会計上費用として処理した金額でも、交際費や寄付金などの申告調整された金額は、所得金額の計算上、損金の額に算入されませんので、試験研究費の対象から除外されます。

決算書で「試験研究費」や「研究開発費」として計上したものが、そのまま対象となるわけではありませんので、注意が必要です。

2013年08月19日

目標管理の方法

今日、「目標管理制度」は日本の企業で一般に活用されていますが、もともとは1950年代に米国でピーター・ドラッカーが提唱した「目標による管理」が出発点になっています。

これは「個々の担当者に自らの業務目標を設定、申告させ、その進捗や実行を各人が自ら主体的に管理することで、大きな成果が得られる。」とするものでした。

日本では、「目標管理制度」として人事制度上の評価に活用され、次のような変遷があり、日本流の活用が進んでいます。

目標管理制度の移り変わり

日本の「目標管理制度」については、企業における活用経験等から様々な論議がありましたが、その主な論点と現状における帰結について整理する次の通りとなります。


①業務目標は担当者が決めて良いか

「業務目標を担当者個々人が考えて設定し、自己申告させる方法をとったところ、それらの目標を全部足し合わせても、上位の目標が達成できない。」と言う矛盾が生じ、また達成しやすい、レベルの低い目標を設定する傾向が見られました。

現状では多くの企業で、戦略目標からブレイクダウン(細分化)して目標を設定する方法をとるようになっています。


②業務目標達成度(成果)だけで評価して良いか

成果主義の評価を再重要視し、結果に注目して評価したところ、チーム業績が公正に評価されず、目立つメンバーだけが評価される。

自分の評価を高めるために良い情報やノウハウを一人占めにし仲間に知らせない。

などチームワークを低下させる行為がでてきました。

また、プロセスの評価を軽視するようになり、業績向上の元になる人材育成がおろそかになる等から業績とプロセス、チームワークを重視するようになりました。


③「絶対評価」か「相対評価」か

評価の仕方には、設定した目標をどれだけ達成したかを評価する「絶対評価」と、戦略目標(全体目標)の達成により貢献した方を高く評価する「相対考課」があります。

目標を設定したあとでも外部環境はよく変化するので、それにうまく対応する努力と結果は多様であり、個人差が生じます。 

それを的確に評価し、限られた昇給や賞与の賃金原資を公正に、メリハリを付けて支給するには「相対考課」とするのが適切とする企業が主流になっています。

2013年08月16日

定款変更と登記

定款は「会社の憲法」とも呼ばれ、その会社の名称や所在地、事業内容、資本金など、根本的な規則をまとめた書類で、会社を設立するときに必ず作成します。

社歴を経ると、移転や事業内容の変化などで、定款をアップデートする必要が出てきます。

定款の内容を変更するには、どうすればよいでしょうか。


定款変更の決議

定款を変更するには、株式会社の場合、株主総会の特別決議が必要です。

特別決議は、総株主の議決権の過半数(定款で総議決権の3分の1以上と定めた場合は、その割合以上)を有する株主が出席し、その出席株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合は、その割合)以上が賛成することによって、可決成立します。

定款変更の内容によっては、特別決議以上に多数の株主の出席、賛成が必要になります。

株主総会の開催成立要件(出席割合)と決議要件(賛成割合)は、事前に確認しておきましょう。


登記

定款の中には、商号、事業目的、機関設計など、登記すべき事項として法律上定められているものがあります。

登記すべき事項ではない定款の変更については、株主総会での議事の内容と決議の結果を記載した議事録を作成し、その議事録を保管しておくことで終了します。

法務局での手続きは必要ありません。

登記すべき事項を株主総会で定款変更決議をした場合には、法務局での登記申請が必要となります。


変更登記申請が必要となる定款変更事由を、いくつかご紹介します。

・会社の本店所在地を移転したとき

・会社の名称を変更したとき

・支店を新設したとき

・会社の事業内容(目的)を変更したとき

・取締役会、監査役等の機関構成を変更したとき

・株式譲渡制限の規定を設けたり、廃止したとき

株主総会議事録は、法務局での変更登記申請の際に必要な書類です。

また、当初の定款プラス定款変更決議の記載された株主総会議事録が、現在の定款ということになりますので、議事録は必ず作成しましょう。

なお、株式会社が定款変更する場合には、公証人の認証を受ける必要はありません。

2013年08月15日

精神疾患と上司の対応

2012年度労災の傾向

最近厚労省から発表された労災申請に関する調査結果によると2012年度に労災認定された人は前年度から150人増え、475人となり、3年連続過去最多を更新しました。

原因は過労や職場のいじめでうつ病等の精神疾患が増え、仕事の内容や職場の人間関係が影響した事例が目立っています。


発症原因別の労災認定者数

背景には医療機関でうつ病と診断される人が増えていることに加えて、厚労省が具体例等で労災認定新基準を公表し、基準が分かりやすくなり、精神疾患でも労災申請が出来ると言う意識も浸透してきました。

労災を申請した人は1257人、4年連続で1千人を超える水準となっています。

労災認定された人のうち原因別では「仕事内容・仕事量」が最も多く59人、「嫌がらせ・いじめ・暴行」が55人、「悲惨な事故や災害の体験や目撃」51人となっています。

1か月に80時間を超える時間外労働も原因としては続いていますが、増加傾向にあるのは「嫌がらせ・いじめ・暴行」で上司とのトラブルやセクハラを挙げる人が増え、職場の人間関係の難しさを感じさせます。

部下のストレスがたまっている時

部下の様子が以前と比べてなにかおかしいと感じ、顔の生気の無さ、口数の少なさ、返事が遅い、週明けの欠勤が多い、ミスが目立つ、人の話を聞いていない、集中力の低下等が2週間以上続いている時には心の病の可能性があります。

上司が立派でスーパーマンやナルシストタイプの場合は、部下のストレス度が最も高いと言われます。

完璧な上司ほど部下の病気を作ってしまう傾向があるようです。


上司は本当に大変

精神疾患系の部下が職場に生まれないようにするには、メンタルヘルス面での知識を上司として身につけておくことです。

部下から心の問題を相談された時にはすぐに解決を目指さず、聞くだけに留め、励ましはせず、共感や労いのある言葉でストレスを和らげることが重要です。

もし、理不尽な要望等を言ってきた時にも、その要求の背景を理解するだけに留めておく姿勢が大事です。

上司こそ、部下が心の健康を崩した時に自分自身が精神的、肉体的負担に押しつぶされないよう心の健康管理が重要なのです。

2013年08月14日

裁判所の管轄

民事裁判をするに当たってまず検討しなければならないのは、どの裁判所に訴状を提出するかという「裁判所の管轄」です。

裁判所の管轄の分類は様々ありますが、特に重要なのは「事物管轄」と「土地管轄」です

事物管轄とは、第1審の受訴裁判所としての裁判権の行使を地方裁判所と簡易裁判所に分担させるための分類であり、訴額が140万円を超える事件の場合には地方裁判所が、訴額が140万円以下の事件の場合には簡易裁判所がそれぞれ管轄権を有します。

土地管轄とは、事件と土地との関係によって定められる管轄をいいます。

普通裁判籍と特別裁判籍を内容とします。

普通裁判籍(民事訴訟法4条)とは、土地管轄の原則的な裁判籍であり、被告の所在地(住所、居所、主たる事務所等)によって定められます。

例えば、150万円の貸金返還請求の訴えの相手方である被告が神奈川県横浜市に住所を有している場合には、その普通裁判籍による管轄裁判所は横浜地方裁判所になります。

特別裁判籍(民事訴訟法5条)とは、事件の種類に応じて認められる裁判籍のことをいいます。

すなわち、

財産権上の訴えの場合には義務履行地が(同条1号)、

不法行為に関する訴えの場合には不法行為地が(同条9号)、

不動産に関する訴えの場合には不動産の所在地が(同条12号)、

それぞれ特別裁判籍を有します。

例えば、150万円の貸金返還請求の場合、貸金返還債務は別段の意思表示がなければ債権者の住所地に持参して弁済する義務がありますから(民法484条、持参債務)、原告(債権者)が東京都品川区に住所を有している場合には、その特別裁判籍による管轄裁判所は東京地方裁判所になります。

普通裁判籍と特別裁判籍は排他的な関係にあるのではなく、原告がどちらかを選択することができます(任意管轄)。

ただし、訴訟の著しい遅滞を避けるために必要があると認められる場合や、当事者間の衡平を図るために必要があると認められる場合には、当事者の申立て又は職権によって、他の管轄裁判所に移送が認められることがあります(民事訴訟法17条)。

以上の他に、合意管轄があります。

合意管轄とは、当事者が合意によって定めた第1審の管轄をいいます(民事訴訟法11条)。

契約書に「本契約に関する紛争については、東京地方裁判所を第一審の管轄裁判所とすることに合意した。」等と記載されていることがありますが、これが合意管轄です(専属的合意管轄)。

例えば、150万円の貸金返還請求で、原告(債権者)の住所地が東京都品川区で、被告(債務者)の住所地が神奈川県横浜市の場合に、金銭消費貸借契約書に上記の合意がされているときは、専属的合意管轄を有する裁判所は東京地方裁判所になります。

ただし、専属的合意管轄が認められる場合であっても移送は可能です(民事訴訟法17条、20条)。

貸金業者の約款に大阪簡裁に管轄合意がされていた場合(債務者である被告は福岡に居住)であっても、被告の経済的負担等を考慮して福岡簡裁に移送を認めた裁判例があります(大阪地裁平成11年1月14日判決)。

契約書に合意管轄の定めがある場合には、注意して読むようにしましょう。

2013年08月13日

消費税率引上げに伴う住宅取得に係る給付措置

自民党と公明党は、平成25年度税制改正大綱において、平成26年4月以降の2段階にわたる消費税引き上げに伴う対応として実施することとした住宅取得に係る給付措置の具体的な内容について合意しました。

この住宅取得に係る給付措置は、消費税率引上げ時の住宅市場の冷え込みを和らげる狙いがあります。

消費税増税に伴う住宅取得対策の一環として、所得税に加え個人住民税による住宅ローン減税の拡大措置を講じても、効果が少ない所得層に対して行われます。

1.給付額

給付額は、消費税率及び収入に応じ以下のとおりです。

<消費税率8%時>

◆年収425万円以下の場合・・・・給付額30万円

◆年収425万円超475万円以下・・・給付額20万円

◆年収475万円超510万円以下・・・給付額10万円


<消費税率10%時>

◆年収450万円以下・・・給付額50万円

◆年収450万円超525万円以下・・・給付額40万円

◆年収525万円超600万円以下・・・給付額30万円

◆年収600万円超675万円以下・・・給付額20万円

◆年収675万円超775万円以下・・・給付額10万円


2.給付対象について

給付対象は、自己の居住の用に供するために住宅を新築、若しくは新築住宅を取得又は中古住宅を取得する者で、住宅の種類及び取得方法に応じ以下のとおりです。

①住宅を新築又は新築住宅を取得する者

a住宅ローンを利用する場合 以下に該当する住宅

・床面積50㎡以上の住宅

・施工中等に検査を実施し一定の品質が確認された住宅


b現金購入の場合

上記aに加え以下に該当する住宅とし、50才以上で650万円以下の収入額(目安)の者が取得する場合に限ります。

・省エネルギー性に優れた住宅など一定の性能を満たす住宅


②中古住宅を取得する者(買取再販等消費税課税対象取引により取得する場合に限る)

a住宅ローンを利用する場合 以下に該当する住宅

・床面積50㎡以上の住宅

・現行耐震基準を満たす住宅

・中古住宅売買時等に検査を受け品質が確認された住宅


b現金購入の場合

上記aに加え、50才以上で650万円以下の収入額(目安)の者が取得する場合に限ります。


この収入額の目安については、標準的な4人世帯(夫婦及び中学生以下の子2人)で、夫が取得する場合となっています。

年収要件の単位は世帯ではなく、個人とする見込です。

今後、政府において消費税引上げの判断も踏まえつつ、最終的な調整が行われる予定ですので、注目していきましょう。

2013年08月12日

未払給与の受領辞退と課税関係

債務免除にかかる原則規定

過去に発生した未払金について相手側から受領辞退等の債権放棄の申し出を受けた場合はその時にこちら側法人の処理としては債務免除益を計上することになります。

この債権放棄が、給与等その他の源泉徴収の対象となるものである場合には、その債務免除を受けた側はその時に支払いをしたものとして所得税の源泉徴収をしなければなりません。

また、支払確定した日から1年を経過した日においてなお未払いになっている配当等または利益処分の賞与等については、その日に支払いがあったものとみなして、所得税の源泉徴収をすることになっています。


原則通りにしなくてもよい場合

次に掲げるような特殊な事情の下において、役員給与その他の源泉徴収の対象となる債権を役員等が放棄した場合には、その放棄により支払われないこととなった部分については、源泉徴収しないことになっています。

(1)給与を支払うべき法人が特別清算開始、破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始などの決定を受けた場合

(2)その法人が事業不振のため会社整理の状態に陥り、債権者集会等の協議決定により債務の切捨てを行った場合

(3)その法人の債務超過の状態が相当期間継続しその給与支払いをすることができないと認められる場合


特殊な事情の場合の課税処理の清算

源泉徴収不要となった場合には、支払法人側は事後の源泉徴収をしないだけで、徴収済分が過誤納となるものではありません。

ただし、債権放棄者にとって、過去の年分の所得が消滅することにより、納付すべき税額に変更が生じる場合には、課税減額の更正の請求をすることになります。

1年経過時に所得税が源泉徴収されていたような場合には、源泉徴収所得税の還付を受けることになります。


課税済みの場合の事後処理

通常の給与や賞与について未払状態が続いている間は、所得税が源泉徴収されることはないので、給与所得しかない者の債権放棄の場合には、所得税については、特に何の手続きもしないで済みます。

しかし、住民税については未払いかどうかにかかわらず納税通知書が送られてきて賦課課税されてしまいますので、更正の請求により、過去の課税処置の訂正を要求する必要があります。

2013年08月09日

建物の賃借に伴い支払う費用について

事務所や店舗、社宅等、建物を賃借した場合には、家賃のほかに、礼金、敷金(保証料)、仲介手数料を支払います。

それぞれの取扱いは、どうなるのでしょうか。


1.礼金

税法では、「建物を賃借するために支出する権利金、立退料その他の費用」は繰延資産に該当する、と規定していますので、礼金は繰延資産に該当します。
繰延資産は、決められた期間の月数で按分し、毎月均等に費用化(月割償却)していきます。

ただし、20万円未満のものについては、支出した時点に全額を費用に計上することができます。


①支出した金額が20万円未満の場合

支出した時点で、全額費用(地代家賃)に計上します。


②支出した金額が20万円以上の場合

支出した時点で、繰延資産に計上します。
 

決算の際に償却を行っていきますが、期間按分の基準となるのが「賃借期間」ですので、賃貸借契約書を確認しましょう。
  
ア)賃借期間が5年未満の場合・・・賃借期間で月割償却

イ)賃借期間が5年以上の場合・・・5年間で月割償却

2.敷金(保証金)

敷金は、原則として賃貸借契約を解約した時に返還されますので、敷金や差入保証金などの資産科目で計上します。

ただし、賃貸借契約書に「解約時償却○か月分」や「償却年○%」などの記述があった場合は、要注意です。

敷金(保証金)のうち一定金額または一定割合が返還されないということになります。

この返還されない部分については、上記1.でご紹介したとおり繰延資産に該当しますので、礼金と同様、金額で判断し、全額費用または繰延資産に計上していきます。

解約時に返還される金額と返還されない金額とを把握し、その性質ごとに区分して計上しましょう。

3.仲介手数料

仲介手数料は、賃貸人と賃借人を仲介した不動産業者に対して支払います。

「建物を賃借するために支出する権利金、立退料その他の費用」として繰延資産にあたるものではありますが、税法では仲介手数料について注書きがあり、「支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することができる」としています。

したがって、支出した時点で全額を費用(支払手数料)に計上しても差し支えありません。

 

2013年08月08日

パートタイマーと社会保険加入

パートで働く場合の収入限度

パートタイマーで働く妻は夫の被扶養者となっている場合、労働時間や収入を気にかけて扶養の範囲内で働く事を考えている方が多いかもしれません。

その年収の限度額は103万円以下の所得税の配偶者控除、130万円未満の健康保険の被扶養者であり、130万円以上になると労働時間も関係ありますが、原則として本人の職場で健康保険と厚生年金に加入することになります。

当然会社も本人も社会保険料を負担することになります。

しかも実質手取りは加入前より減ってしまう場合もあります。


会社として良かれと思っても

企業の中にはパートタイマーの方にもっと能力発揮をしてもらいたい、活躍してもらいたいと労働時間を気にしないで働ける労働環境を作り、保険料分の賃金を上乗せし社会保険加入をさせ、人件費が増えることをマイナスばかりではないと考える企業もあります。

ただ、本人からみると130万円を超え、社会保険加入をした場合には、夫との収入を合算した世帯の手取り収入も考える必要があります。


実質収入はどうなるのか

年収130万円の場合、社会保険料の健康保険料率は標準報酬月額の9.97%(都道府県で異なる)、介護保険料率(40歳以上)は1.55%、厚生年金保険料率16.766%の半分の自己負担額を考えると概算で年186,684円です。

夫の会社が配偶者控除を受けられる妻、または健康保険の被扶養者である妻に対し、給料で家族手当(会社により異なるが、1万円~3万円程度が多い)を支給している場合、手当が受けられなくなることもあります。

したがって、夫の実質収入減(所得税アップと家族手当の減)があると130万円を少し超えただけでは世帯収入の手取りはかえって減ってしまうかもしれません。


130万円の壁を取り払って働く

年収については、掛け持ちするなら100万円、たくさん働くなら200万円くらいが目安かもしれません。

2013年08月07日

法律要件と法律効果

一般的に法律の規定は、一定の条件を満たした場合には、一定の効果が生ずるという形式で定められています。

法律の世界ではこの一定の条件のことを「法律要件」といい、一定の効果のことを「法律効果」といいます。

租税法の世界では、「課税要件」という法律要件を満たすと、「納税義務」という法律効果が発生するように規定されています。


課税要件の主な内容は「納税義務者」「課税物件」「課税物件の帰属」「課税標準」及び「税率」です。

例えば、「所得税の納税義務の成立」という法律効果が発生するためには、「納税義務者」(所得税法5条)、「課税物件」(所得、同法23条~35条)、「課税物件の帰属」(納税義務者の所得であること)、「課税標準」(同法22条)、「税率」(同法89条)という課税要件が必要です。

刑事法の世界では、「構成要件、違法性、責任」という法律要件を満たすと、「国家刑罰権の発動たる刑罰」が法律効果として発生します。

例えば、刑法199条(殺人)は「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と規定されていますが、法律要件は「人を故意に殺したこと、違法性阻却事由がないこと、責任阻却事由がないこと」であり、法律効果は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役刑」です。

違法性阻却事由(正当防衛など)と責任阻却事由(心神喪失など)は刑法199条には規定されておらず刑法総則に定めがあります。


民法を中心とする民事系の法律の場合には、「法律要件」の内、一定の法律効果が発生するために必要な具体的事実のことを特に「要件事実」と呼びます。

例えば、民法555条(売買)は「売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と規定されていますが、法律要件は「当事者が財産権の移転と代金の支払を約束すること」であり、法律効果は「売買契約の成立」です。

そして、「売買契約の成立」に必要な具体的事実である要件事実は「売買の目的物」、「代金額」及び「売買の合意」です。

民事訴訟において、売買契約に基づいて代金支払請求をする場合には、原告は要件事実として最低限、上記の「売買の目的物」「代金額」及び「売買の合意」を主張立証しなければなりません。

具体的には、例えば「原告は、被告に対し、平成25年8月7日、パソコン1台を20万円で売った。」などと主張します。

日付は要件事実ではありませんが、売買を特定するために必要になります。

また、売買の合意は「売った」という言葉で表します。

そして主張内容を立証するために「売買契約書」、「納品書」、「注文書」などの書類を証拠として用います。

以上のように、法律の条文は「法律要件」と「法律効果」によって構成されていることがご理解頂けたと思います。

ただし、条文の文言が一義的に明らかでない場合には条文解釈が必要です。

法律を勉強する際はこの条文解釈が中心になります。

2013年08月06日

相続税法における国籍ルール改正

相続税・贈与税に関する国籍ルールの二度目の改正が今年ありました。

一度目の国籍ルール改正

日本の非居住者が相続贈与により国外財産を取得した場合は、日本で課税できないことになっていた時代、「子を贈与税の受贈者課税のない外国に転居させ、日本非居住者にして、国外に移した財産を非課税で贈与する」という手法が富裕層の間で流行しました。

極めつけが平成11年の武富士株式1600億円の無税贈与でした。

この武富士事件発生年の翌年に、一度目の国籍ルール改正として、相続贈与前5年以内に相続人・被相続人・贈与者・受贈者の何れかの者が日本国内に住所を有していたならば、日本国籍者については、取得した全財産につき相続税や贈与税の納税義務を課すとしました。

二度目の国籍ルール改正

二度目の改正では、相続贈与による財産取得者がたとえ非日本国籍者で日本非居住者だったとしても、被相続人・贈与者が日本国居住者だったら、取得した全財産につき相続税・贈与税の納税義務を課すとしました。

この改正の動機も、日本国籍を持たないことによる贈与税回避の事例が生じたことに拠ります。


動機の事例は渡米出産米国籍取得

親は渡米して出産し、子は在米出産として米国籍を取得し、在米中の生後約8か月の時(平成16年8月)に、祖父である日本の居住者から、アメリカ国債500万ドルが米国ニュージャージー州の信託財産として引き渡されたというもので、すでに、地裁で納税者勝訴(平成23年3月23日言渡)、高裁で納税者敗訴(平成25年4月3日言渡)を経て、現在は最高裁に上告中です。


高裁敗訴を予測しての税法改正なのに

税務署側は、「贈与を受けた生後約8か月の乳児の生活の本拠は、現実に在米中の場所ではなく、養育している両親の生活の本拠地の日本と判定すべき」と主張しました。

地裁判決ではこの主張は受け容れられませんでしたが、高裁では受け容れられて、納税者逆転敗訴となりました。

国籍ルール改正タイミングが遅かったのは、改正後法律の遡及適用との議論を避けたかったからだとすると、国税側は高裁敗訴・納税者勝訴確定を予想していたのかもしれません。
       

2013年08月05日

小規模企業共済の掛金を承継した場合の課税

小規模企業共済制度は、個人事業主や小規模な会社等の役員が事業をやめたり退職等をした場合に、生活の安定や事業の再建を図る資金をあらかじめ準備しておくもので、いわば経営者の退職金制度です。

この共済制度は、昭和40年から存続する制度で、掛金の全額を所得控除の対象となり、もっともオーソドックスな節税商品とし多くの事業主の方に利用されています。                


    
一時金を受け取る場合

共済契約者(掛金を負担した人)が亡くなり、遺族が共済金を一時金で受け取る場合、その課税関係はどうなるでしょうか。

所得税は全額非課税です。

一方、相続税法では、共済金は死亡退職金として取り扱われ、みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、500万円×法定相続人の金額まで非課税となります。

掛金を承継した場合

なお、一時金の請求に代えて、相続人が共済契約者である被相続人の事業を相続し、契約者の掛金及び納付月数の承継通算をすることもできます。

この場合の課税関係はどうなるか、ですが、明確な取扱いはありませんでした。この点について、過日、東京国税局より文書回答が公表されました。

それによると、一時金に関する権利(共済金を請求する権利「受給権」)は、

①みなし相続財産として相続税の課税対象になる。

②当該受給権は、相続税法に規定する退職手当金等に含まれる。

③一定金額(500万円×法定相続人の数)は相続税の課税価格に算入されず非課税財産となる。

④当該受給権の評価は、相続開始時に本件一時金の支給を請求した場合に受け取ることができる額である。

というもので、一時金の支給と同様な取扱内容となっています。


共済金の受け取り順位

共済契約者が亡くなった場合の共済受給権の受け取り順位は、一般の相続財産におけるものとは少し異なり、小規模企業共済法で定められていますので、注意が必要です。

具体的な受給権の順位は、次のようになっています。

第1順位は配偶者(内縁関係者も含む)で、第2順位以下は共済者が亡くなった当時、共済契約者の収入によって生計を維持していた方で子、父母、孫等と続き、そして、次に、共済契約者の収入によって生計を維持していなかった方で子、父母、孫等の順位となっています。

2013年08月02日

遺贈と死因贈与

遺贈も死因贈与も「贈」の字があらわすとおり、贈与の一種です。

しかし、どちらの場合も、贈与税ではなく相続税の対象となります。

遺贈

遺贈とは、故人が遺言によって財産を贈与することをいいます。

贈与ではありますが、人が亡くなったことによって財産が移動するので、相続税の対象となります。

原則として、遺言には適正な手順を経て残された書面(遺言書)が必要になります。

遺贈には、包括遺贈と特定遺贈の2種類があります。

包括遺贈は、例えば遺言書に「全財産の4分の1を分ける」といった割合を示すものです。

この場合、プラスの財産だけでなくマイナスの財産(借金などの債務)も引き継がなければなりません。

一方の特定遺贈は、例えば遺言書に「○○会社株式」「現預金○万円」「○市の土地のうち○㎡」のように明示があるものです。

この場合、遺言書にあるものだけを引き継げばよいので明快なのですが、遺言書が書かれた時点で存在した財産が、亡くなった時には既に処分されていて存在しないという可能性もあります。

死因贈与

死因贈与とは、死亡することで効力が発生する贈与のことで、簡単に言えば「私が死んだら○○をあげる」という贈与です。

こちらも贈与ではありますが、人が亡くなったことによって財産が移動するので、相続税の対象となります。

遺贈の場合は、亡くなって遺言書を開けてはじめて「○○をあげる」という意思が伝わる一方通行ですが、死因贈与の場合は、「私が死んだら○○をあげる」「もらいます」といったように生前に意思疎通できた状態ですので、契約といえます。

死因贈与の契約には、遺言書のような決まった手順はありません。

後々のトラブルを避ける為にも、契約書を作成しておいた方がよいでしょう。

2013年08月01日

在留期間の更新不許可とその対応

外国人従業員と在留期間の更新許可

日本に滞在する外国人の方は、永住の許可を取っていない限り、基本的に数か月~数年間の滞在期限が決められています。

この日本で適法に滞在できる期間を「在留期間」と言い、許可された在留期間を超えて日本に滞在したい場合には満了前に更新許可申請を行わなくてはなりません。

在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り」許可するとされています(出入国管理及び難民認定法第21条3項)。

前回の申請時と何ら変わりなく日本で活動しているのであれば、さほど更新の申請について神経質になる必要はありませんが、その外国人本人の生活状況をはじめ、企業側の事情変更等に影響され、在留期間の更新は必ず許可されるものではないということは気に留めておくべきと言えます。


もしも不許可になってしまったら…

更新許可申請を不許可とする通知書が来てしまった場合、まずは不許可の理由を明確にします。

不許可通知書には、不許可となった「理由」と「根拠となる事実」が記載されていますが、数行書いてある程度で、具体的に何が原因で不許可となったのかを読み取ることは困難です。

不許可通知書と身分証、申請した書類の控え等を持参の上、管轄する入国管理局で理由を確認します。

再申請できる可能性も

不許可の理由が入国管理局の誤解によるものや立証書類の不足によるもの、あるいは今後解決の見込みがあるものなどであれば、それらを払しょくする資料を集め再申請できる可能性も十分にあります。

しかし、在留期間まで余裕がなければこうした対応も難しくなりますので、日ごろから企業側が外国人従業員の在留期間について把握し、余裕を持って申請するよう促すことが良い予防策となります。

不許可処分となり、在留期限を超えて日本へ留まることはできませんので、もし再申請ができるだけの状況へ運ぶことができない場合には、残念ながら企業としては帰国するよう促すほかありません。

在留期限を超え雇用し続けることは、不法就労助長罪に当たります。

再度その外国人を雇用したいのであれば、まず一度帰国するよう指導し、条件を整えた上で、改めて呼び寄せの手続きを行います。
 


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