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2013年05月 アーカイブ

2013年05月31日

研究開発税制とは

研究開発税制とは

研究開発税制は、研究開発に力を入れる企業を支援する制度で、

①試験研究費の総額に係る税額控除制度、

②特別試験研究に係る税額控除制度、

③中小企業技術基盤強化税制、

④試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度

の4つの制度によって構成されています。


4つの制度の概要


1.試験研究費の総額に係る税額控除制度

青色申告法人のその事業年度において損金の額に算入される試験研究費がある場合に、その試験研究費の額の一定割合の金額を、その事業年度の法人税額から控除することができます。

2.特別試験研究に係る税額控除制度

青色申告法人のその事業年度において損金の額に算入される「特別試験研究費」がある場合に、その特別試験研究費の額の一定割合の金額を、その事業年度の法人税額から控除することができます。


3.中小企業技術基盤強化税制

中小企業者等である青色申告法人のその事業年度において損金の額に算入される試験研究費がある場合に、その試験研究費の額の一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除することができます。

ただし、上記1、2の制度と重複して適用することはできません。


4.試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度

青色申告法人の平成20年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度において 損金の額に算入される試験研究費がある場合で、次のいずれかに該当するときに、上記1、2、3とは別枠で、その試験研究費の額の一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除することができます。

(1)その試験研究費の額が、比較試験研究費の額を超え、かつ、基準試験研究費の額を超える場合

(2)その試験研究費の額が、その事業年度の平均売上金額の10%相当額を超える場合

対象となる試験研究費

製品の製造または技術の改良、考案もしくは発明に係る試験研究のために要する費用で、例えば次に掲げるものをいいます。

①その試験研究を行う為に要する原材料費、人件費(専門的知識をもって試験研究業務に専属して従事する者の人件費に限る)、経費

②他の者に試験研究を委託するための委託費用

③技術研究組合の組合員が負担する賦課金

など。

試験研究に充てるために他の者から補助金等の支払を受けた場合には、その金額を控除した金額が試験研究費の額となります。

なお、これらの試験研究費は、工学的・自然科学的な基礎研究、応用研究及び開発・工業化等を意味するものですが、必ずしも新製品や新技術に限らず、既存製品の製造や技術改良等のための試験研究であっても対象となります。

裏を返せば「製品の製造」または「技術の改良、考案若しくは発明」にあたらない人文・社会科学関係の研究は対象とはなりません。
 
ですので、例えば次のような費用は含まれませんので、ご注意ください。

イ.事務能率・経営組織の改善に係る費用

ロ.販売技術・方法の改良や販路の開拓に係る費用

ハ.単なる製品のデザイン考案に係る費用

ニ.既存製品に対する特定の表示の許可申請のために行うデータ集積等の臨床実験費用

2013年05月30日

公証役場をご存じですか

「公証役場」とは

公証役場とは公証人が執務する官公庁の一つで、全国に約300か所あります。

しかし、官公庁のイメージと裏腹に、目立たない場所で、小さな古びた雑居ビルに入っていることも少なくありません。

公証人とはどういう人か

公証人とは、公証人法に基づき、法務大臣が任命する公務員で、ある事実の存在、もしくは契約等の法律上の権利に関わる行為の適法性等について、公権力を根拠に証明・認証する人をいいます。

ご存じの通り、裁判では証拠が重要ですが、公証人は公権力を背景に証拠としての価値に強力な「お墨付き」を与えます。

このような公的な性格から、公証人は、公平中立で、法的な見識も確かな人材が求められます。

そこで、多くは司法試験合格後司法修習生を経た法曹有資格者がなりますが、その実際は退官した裁判官・検察官が多く占めており、その意味で開かれた人事とはいえません。


公証人はどういう仕事をするか

具体的には、

(1)公正証書の作成

(2)私署証書や会社等の定款に対する認証の付与

(3)私署証書に対する確定日付の付与の3種類があります。

(1)は、改めて次回に詳しくご説明します。

(2)は、私人が作成した文書について、文書の成立及び作成手続の正当性を証明するものです。

会社や一般社団法人等の法人の「定款」の認証が典型例です。

(3)は、私文書に確定日付を付与し、その日にその文書が存在したことを証明するものです。

証拠の価値を測る際、作成された時点が何時かが重要なことがあります。

その場合、バックデートしたとの文句を封じるのが確定日付です。


自給自足の独立採算制

公務員である公証人ですが、指定された地域を管轄する公証役場内に自分で役場(公証人役場)を開き、書記らを雇って職務を遂行します。

その収入源は、国家からの俸給ではなく、依頼人から受け取る手数料とする独立採算制です。

なお、手数料は政令で定められております。

2013年05月29日

会社の解散と第二次納税義務

納税義務とは、納税義務者が国又は地方公共団体に対して租税と呼ばれる金銭給付をなすべき債務をいいます。

当然のことながら、株式会社であれば当該株式会社が、個人であれば当該個人が、それぞれ法人税と所得税の納税義務者になります。

第二次納税義務とは、本来の納税者の財産について滞納処分を執行しても徴収すべき国税に不足すると認められる場合に限り、その者と一定の関係がある者に対し、二次的に納税義務を負わせようとする制度です(国税徴収法32条以下)。

第二次納税義務者には、合名会社や合資会社の無限責任社員、解散した法人の清算人等、同族会社、財産等の名義人、共同事業者、事業を譲り受けた特殊関係者、無償又は著しい定額の譲受人等、人格のない社団等がありますが、今回は「解散した法人の清算人等」(国税徴収法34条)について解説します。

法人が消滅する場合には、通常は、①解散、②残余財産の分配、③清算結了という流れを辿ります。

清算が結了して登記が完了すれば、法律上、原則として当該法人は消滅したことになります。

しかし、滞納税額があるまま清算結了したような場合には、たとえ清算結了登記が済んでいたとしても法律上は清算の目的の範囲内においてなお存続し、法人格は消滅していないものと扱われます(国税不服審判所平成22年12月16日裁決)。

このような場合には当該法人に課税処分をしても、清算人により残余財産が分配された後ですから、滞納税額を徴収することはできません。

そこで、滞納税額の徴収を図るため、当該残余財産を分配した清算人と分配を受けた者は、第二次納税義務者として、当該法人が負担すべき滞納税額について納税義務を負うことになるのです(納税義務の拡張)。

法人が解散し、滞納税額があるにも関わらず残余財産の分配をすると、清算人等が第二次納税義務を負うことになるので注意が必要です。

債務超過の法人を消滅させる手続には、特別清算及び破産申立てがあります。

倒産手続きは税金の申告等にも密接に影響するため、適切な手続の選択と処理を専門家(弁護士・税理士)に相談して進めましょう。

日本タックスサービスでは弁護士と税理士によるワンストップサービスが可能です。

2013年05月28日

事前確定届出給与

役員給与は、基本的に、毎月同額が支給される「定期同額給与」であれば、全額損金算入が認められます。

通常、臨時的に支給される役員賞与などは損金算入が認められていませんが、「定期同額給与」以外で損金算入が認められるものが「事前確定届出給与」です。

もうひとつ、大会社向けの制度である「利益連動給与」とあわせて、役員給与はこれら3つ以外は、損金算入が認められていません。

このうちの「事前確定届出給与」について説明したいと思います。


「事前確定届出給与」とは、支給時期、支給額をあらかじめ定めておき、その内容についての届出を税務署に提出することにより、定期同額給与とは別に、賞与のように支給することができる給与です。

この適用を受けるには、定時株主総会等で決定した支給金額及び支給時期(支払日)等を「事前確定届出給与に関する届出書」にて、所轄税務署に届け出る必要があります。

この届出書は、職務執行開始日(定時株主総会の開催日)から1か月経過する日若しくは、その事業年度の会計期間開始日から4か月以内のいずれか先に到来する日までに提出しなければなりません。

・メリット

定期同額給与以外に賞与のように支給することができ、届出通りに支給すれば、全額損金算入が認められます。

非常勤役員など、年間を通じて執務していない役員に対しても、まとめて年に一、二度の支給が可能になります。

・デメリット

業績不振や資金繰りの悪化等があっても、支給日、支給額ともに届出通りに支給しなければなりません。

届出通りに支給しなければ、支給額全額が損金不算入となります。

例えば、届出額100万円のところ、50万円しか支給出来なかった場合には、支給額の50万円が損金不算入になり、150万円を支給した場合には、150万円を損金不算入としなければなりません。

また、届出書の記載項目が多く、役員全員の定期同額給与の記載が必要など、届出書の作成、事務処理に手間がかかります。

ただし、全く支給出来なかった場合、経費には1円も計上していないので、損金不算入額も0円になります。

この場合は、支給日前日までに役員から支給を辞退する旨の書類の提出を受けた上で、取締役会での不支給決議を行う必要があります。

判断の難しい制度ではありますが、今期の予測で、あらかじめ大きな利益が出て、資金も潤沢に残ることが明らかであれば、「事前確定届出給与」を検討してみてはいかがでしょうか。

2013年05月27日

外国籍従業員の呼び寄せ

来日までにどれくらいかかる?

平成25年の春採用から、就職活動の解禁時期が大学3回生の10月から12月に繰り下げられたことで、年明けから各企業の就職説明会が一気に本格化しています。

その中で、外国籍留学生の採用に積極的な企業の様子が頻繁に報道されていますが、一方では海外現地において外国籍従業員を採用し、研修期間を経て日本へ呼び寄せるという流れも見られます。

観光目的で短期間来日する場合などと違い、中長期間滞在する場合には呼び寄せまでにある程度の手続き期間を要します。

手続き期間は来日目的により異なりますが、一般的に就労目的で来日する場合、1か月半から2か月程度の期間が必要です。


来日までのステップは二段階

外国籍従業員を日本に呼ぶ際には、主に二段階のステップを踏みます。

まずはじめの段階は、在留資格認定証明書交付申請と呼ばれる日本国内で行う手続きです。

在留資格認定証明書とは、日本に入国予定の外国人が、法律に定められた入国要件に該当することを、法務大臣があらかじめ認定した旨を証明する文書であり、いわば来日のための推薦状です。

この推薦状を得るために必要な期間は、申請から1か月~1か月半程度です。

次に、二段階目として挙げられるのが、海外での査証(ビザ)発給手続きです。日本で発行された在留資格認定証明書を海外の従業員へ送付し、本人又は代理申請機関が大使館・領事館で手続きを行います。

この手続きにかかる期間は各国により様々ですが、おおむね1週間程の期間を要します。


最低でも手続きに1か月半

つまり、日本国内での手続き期間(約1か月~1か月半)と海外での手続き期間(約1週間)を合わせると、最低でも手続き期間として1か月半程度は必要であり、これに資料の送付や従業員の出国準備等にかかる時間を考慮すると、申請から来日までに2か月は見ておきたいところです。

また、在留資格認定証明書はあくまで推薦状であり、入国が保証されたものではありませんので、現地で査証発給までに思わぬ時間を取られることもあります。

外国籍従業員の呼び寄せ時には、就労開始予定の日から逆算し、十分に余裕を持って準備するようにしましょう。

2013年05月24日

助成金・補助金の活用

助成金や補助金は、借入とは違い返済する義務がありませんので、機会があればぜひ活用したいものです。


助成金・補助金は、支給源で大きく3つに分類することができます。


①厚生労働省

雇用の維持、拡大や再就職支援、従業員の能力向上などを目的とした助成金を扱っています。


②中小企業庁

創業、雇用、IT化、省エネ対策など、中小企業の経営支援目的とした助成金を扱っています。


③自治体(都道府県、市区町村)

地域域の中小企業や商店街等の産業振興を目的とし、特色ある助成金を設けています。

知られていない自治体の助成金・補助金

自治体の助成金・補助金はさほど高額ではありませんが、意外に身近な事柄が助成金・補助金の対象となっています。

例えば、以下のようなものがあります。


1.建物の緑化に関する助成金・補助金
 
建物の屋上に植物を植えたり、ベランダや壁面に「緑のカーテン」を作る等、 新たに建物の緑化をしようとする場合に支給される助成金・補助金です。
  

2.ホームページ制作に関する助成金・補助金

営業用ホームページを作成した中小企業に対する助成金・補助金です。

助成対象として、ホームページを新規に作成する場合のみとする市区町村もあれば、販路拡大等の目的でホームページを改修する場合も含めるところもあります。

また、助成の対象となる経費についても、業者に制作依頼をした場合のみでなく、自社で作成した場合のソフト購入代を補助している市区町村もあります。
 


3.会社や製品のPRに関する助成金・補助金

中小企業が展示会や見本市などに出展する場合や、会社案内や製品カタログなどを作成する場合の助成金・補助金です。
 

申請にあたっての注意点

助成金・補助金申請については、事前に申請書を提出しなければならない場合がほとんどですし、募集要件や募集期間も自治体によって異なりますので、あらかじめ確認しておきましょう。

2013年05月23日

相続二重資格者と相続人数

相続二重資格の二つの事例

事例1 婿養子夫婦に子がないまま養子の夫が死亡して相続が開始したとすると、養親実親も他界していた場合、相続人は妻と兄弟姉妹になりますが、妻には配偶者としてと兄弟姉妹としての相続資格があります。

事例2 子が母の妹の養子になったものの、母もその妹も祖父より先死した場合、祖父の相続で、養子になった子は母と養母の両方の代襲相続人として相続資格を持ちます。

相続二重身分で異なる二つの事例

相続税の総額の計算では、法定相続分と代襲相続分の両方がある場合は二重身分としてこれを合算することにしていますが、事例1の配偶者と兄弟姉妹との法定相続分の重複では行政先例は配偶者の身分のみを認めるとしているので、合算はありません。


二重身分と相続人の数

また、相続税法では、相続人の数も税額計算に影響します。

相続人の数という場合、相続資格者の数、相続人実数、のどちらなのでしょうか。相続税法には、民法第5編第2章規定の相続人の数としか書かれていません。


法定相続人の数とは相続資格者の数のことと解して相続申告したところ、税務署がこれを実数と解して申告の訂正を勧奨してきたので、訂正申告をした上で、更正の請求をし、更正なしの通知処分、異議申立を経て審査請求事例になったものがあります。冒頭に掲げた事例2です。


相続資格者の数が法定相続人の数か

納税者の主張は、各資格に係る法定相続分を合算して相続税の計算をするのであるから、相続人としての資格の数で基礎控除額を計算するのが適合的というものでした。

審判所は、民法第5編第2章の各条は、相続人となり得る者の範囲及び要件を規定したものであり、代襲者の資格などを有することになれば相続人の1人になれるという結論を導くためのものであり、資格が重複する相続人がいたとしても、相続人の実数が増加する訳ではないので、請求人の主張は採用できないとしました。


通達にも触れたものがある

なお、通達としては、養子の数の制限に関する条項に於いて、代襲相続養子は実子扱いとなることを確認しつつ、その中で、代襲相続養子でかつ直養子の場合に触れて、相続人数は実子1人としているものがあります。

2013年05月22日

消費税率引き上げに伴う経過措置

消費税率が現行の5%から8%(平成26年4月1日)、10%(平成27年10月1日)に二段階で引き上げられます。

原則として変更日以降の消費税が課税される取引に新税率が適用されますが、一定の取引については変更日以降も旧税率である5%が適用される経過処置が設けられました。

今回は8%変更時の経過処置について紹介します。

平成26年4月1日以後も経過措置が適用され税率5%で課税される取引のうち主なものは以下のとおりです。

①旅客運賃等

平成26年4月1日以後に行う旅客運送の対価や映画・演劇を催す場所、競馬場、競輪場、美術館、遊園地等への入場料金等のうち、平成26年4月1日前に領収しているもの。

②電気料金等

継続供給契約に基づき、平成26年4月1日前から継続して供給している電気、ガス、水道、電話に係る料金等で、平成26年4月1日から平成26年4月30日までの間に支払いを受ける権利が確定するもの。

③請負工事等

平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した工事(製造を含みます。)に係る請負契約(一定の要件に該当する測量、設計及びソフトウェアの開発等に係る請負契約を含みます。)に基づき、平成26年4月1日以後に課税資産の譲渡等を行う場合における当該課税資産の譲渡等。

④資産の貸付け

平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づき、平成26年4月1日前から同日以後引き続き貸付けを行っている場合(一定の要件に該当するものに限ります。)における、平成26年4月1日以後行う当該資産の貸付け。

⑤指定役務の提供

平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した役務の提供に係る契約で当該契約の性質上役務の提供の時期を予め定めることができないもので、当該役務の提供に先立って対価の全部または一部が分割で支払われる契約(割賦販売法に規定する前払特定取引に係る契約のうち、指定役務の提供に係るものをいいます。)に基づき、平成26年4月1日以後に当該役務の提供を行う場合において、当該契約の内容が一定の要件に該当する役務の提供。

指定役務の提供とは、冠婚葬祭のための施設の提供その他の便宜の提供に係る役務の提供をいいます。

⑥予約販売に係る書籍等

平成25年10月1日前に締結した不特定多数の者に対する定期継続供給契約に基づき譲渡される書籍その他の物品に係る対価を平成26年4月1日前に領収している場合で、その譲渡が平成26年4月1日以後に行われるもの。

⑦特定新聞等

不特定多数の者に週、月その他一定の期間を周期として定期的に発行される新聞または雑誌で、発行者が指定する発売日が平成26年4月1日前であるもののうち、その譲渡が平成26年4月1日以後に行われるもの。

⑧通信販売

通信販売の方法により商品を販売する事業者が、平成25年10月1日前にその販売価格等の条件を提示し、または提示する準備を完了した場合において、平成26年4月1日前に申込みを受け、提示した条件に従って平成26年4月1日以後に行われる商品の販売。

⑨有料老人ホーム
平成8年10月1日から平成25年9月30日までの間に締結した有料老人ホームに係る終身入居契約(入居期間中の介護料金が入居一時金として支払われるなど一定の要件を満たすものに限ります。)に基づき、平成26年4月1日前から同日以後引き続き介護に係る役務の提供を行っている場合における、平成26年4月1日以後に行われる当該入居一時金に対応する役務の提供。

上記以外にも経過措置が適用される取引があります。

新税率適用前後の会計処理や消費税の申告の際は注意が必要です。

2013年05月21日

青色欠損金等の繰越控除の縮減と繰越期間の延長

平成25年3月期の決算申告が大詰めを迎えていると思いますが、平成24年4月1日以降開始する事業年度から、「青色欠損金の繰越控除の縮減措置」と「繰越期間の延長」が適用されます。

①青色欠損金の繰越控除の縮減措置

従来、控除限度額は「繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得の金額」とされていましたが、「繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得の金額の100分の80相当額」に縮減となりました。

つまり、前期から繰り越してきた欠損金額が当期の控除前所得よりも多い場合でも、80%までしか控除できずに、課税所得が生じることとなります。

例えば、次のようになります。

欠損金の前期繰越額 500万円

控除前所得     400万円

控除限度額     320万円

控除後所得      80万円

欠損金の翌期繰越額 180万円

80%に縮減といっても、欠損金の一部を切り捨てられるようなことはなく、残った欠損金は翌期以降へ繰り越されることになります。

この改正は、資本金1億円以下の中小法人等には適用されませんので、中小法人等は従来通り、控除前の所得額まで控除することができます。


②青色欠損金の繰越期間の延長

青色欠損金の繰越控除の対象となる欠損金額が、「各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度で生じた欠損金額」から、「各事業年度開始の日前9年以内に開始した事業年度で生じた欠損金額」に改正されました。

この繰越期間の延長については、平成20年4月1日以後に終了した事業年度において生じた欠損金額について適用することとされています。

3月決算法人で考えてみると、平成21年3月期に生じた欠損金額について、従来は平成28年3月期までの繰越でしたが、平成29年3月期、平成30年3月期まで繰越可能となります。

この改正に伴い、欠損事業年度の帳簿書類の保存が繰越控除の要件とされ、帳簿書類を9年間保存しなければならないことになりました。

資本金1億円超の大法人は、この平成25年3月決算申告において、すぐに影響を受けますが、中小法人等の申告は、結果的に、従来通りの申告となります。

2013年05月20日

受給を遅らせて割増年金を受け取る時

老齢厚生年金の繰り下げ支給

老齢厚生年金の繰下げ支給とは「65歳以後の老齢年金」を受け取ることができる場合に、65歳からは受けずに、66歳の誕生日の前日以降に申し出をすることにより、その申し出をした日の翌月から増額された老齢厚生年金を受け取ることができる制度です。

繰り下げ支給の申し出を行える人

昭和17年4月2日以後生まれの人は原則、66歳の誕生日の前日以後に支給の繰下げの申し出ができます。

ただし、65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までの間に障害厚生年金、遺族厚生年金等の年金を受け取る権利を有したことがある時は申し出ができません。

また、66歳の誕生日以後に障害厚生年金や遺族厚生年金を受け取る権利が発生した場合は、支給の繰下げの申し出はできますが、この場合他の年金が発生した月を基準として増額率が定められ、繰下げ加算額が計算されます。

増額された老齢厚生年金は実際に繰下げの申し出をした月の翌月から支給されます。

なお、昭和17年4月1日以前生まれの方であって平成19年4月1日以後に老齢厚生年金を受けることができることとなった方も繰下げの申し出を行うことができます。


繰り下げした時の加算額は

繰下げ加算額は原則65歳時点の老齢厚生年金額を基準として支給の繰下げの申し出をした時期に応じて、計算されます。

繰下げ加算額=(繰下げ対象額+経過的加算額)×増額率

繰下げ対象額は原則65歳時点の老齢厚生年金額ですが65歳以降に厚生年金に加入していた時は在職老齢年金を適用されたと仮定した場合に支給される年金額です。

増額率は「繰下げ月数×0.7%で、1か月7%ずつ増額され、70歳まで5年間繰下げると最大42%までは繰下げができます。

ただ、71歳になってから繰下げ支給の申し出をしても70歳到達時の42%の増額率のままであり、70歳に遡っての増額はありませんので、最大の繰下げを行う時は70歳に到達した月の月末までに手続きをすることが良いでしょう。

2013年05月17日

役員の任期

(1)取締役の任期

取締役の任期は原則2年ですが、株式譲渡制限会社では、定款の取締役の任期規定を変更することによって、最長10年まで伸長することができます。

「最長10年」ですので、例えば5年でも8年でもかまいません。

取締役は任期満了とともに改選が必要となりますが、改選の結果顔ぶれが変わらなかったとしても、法務局に登記手続きをしなければなりません。

同族会社等の閉鎖的な会社では役員の変更は稀ですので、任期を伸長することは、会社の実情に合わせた対応といえますし、登記費用の節約にもなります。


(2)監査役の任期

監査役を設置している場合、任期は原則4年ですが、株式譲渡制限会社では、定款の監査役の任期規定を変更することによって、最長10年まで伸長することができます。

監査役も、取締役と同様、任期満了とともに改選し、登記手続きが必要となります。

取締役の任期伸長をお考えの場合は、監査役もあわせて検討するとよいでしょう。


(3)定款変更

株主総会を開催し、特別決議による定款変更決議が必要になります。

任期伸長決議が可決されれば、その効力は直ちに発生します。

変更内容を証明するため、議事録を作成し、原始定款とともに必ず保管しておきましょう。

なお、役員の任期については登記事項ではありません。

また、この定款変更によって、再度公証人の認証を受ける必要もありません。

(4)注意点

①取締役と監査役の任期がずれている場合、登記回数が多くなるだけでなく、登記手続きが煩雑になります。

例えば、任期を取締役10年、監査役4年としますと、監査役のみの登記が4年ごと、取締役のみの登記が10年ごと、取締役・監査役両方の登記が20年ごとということになってしまいます。

任期は、同じ年数で揃えた方がよいでしょう。

②任期の途中で取締役を解任した場合、正当な理由がない限り、任期満了までの残期間に見合う役員報酬を、損害賠償請求される恐れがあります。

③任期を伸長すると、改選時期が当分先になってしまうため、任期を忘れて役員改選決議をしなかったり、役員登記を怠ってしまうことが大いに考えられます。

役員登記手続を怠った場合、最悪のケースで100万円以下の過料(罰金)に処される可能性がありますので、ご注意ください。

2013年05月15日

海外親会社からのストックオプション

少々古い話題ですが、海外親会社からのストックオプションの所得分類については、平成17年1月25日の最高裁判決が有名です。

新聞等でも大きく報道されましたが、判決内容は原告(納税者)の完全敗訴でした。

ストックオプションとは

「自社の株式を一定の価額で購入することができる権利」のことで、会社が自社の役員や従業員に対して付与する権利です。

通常、株価が上昇した時に権利行使して証券市場で売却します。

売却価額と購入価額の差が、利益(課税所得)となります。

株価上昇と共に利益も莫大な金額になるので、権利保持者は会社業績向上に貢献するモチベーションが上がります。


例えば

権利行使株数100,000株、権利行使価額¥1,000、時価¥3,000の場合

¥300,000,000(売却価額)-¥100,000,000(購入価額)=¥200,000,000(利益2億円)

この利益が課税の対象になりますが、日本法人に勤務する納税者が海外の親会社から付与されたストックオプションの権利行使による利益が「給与所得」か「一時所得」になるか見解が分かれてきました。

どちらの所得として扱うかにより、納税額に大きな差が出ます。

サラリーマンお馴染みの「給与所得」では、給与所得控除があるだけです。

一方、偶発的な所得である「一時所得」は(利益-50万円)×1/2で計算します。

上記の例で利益が2億円の場合、給与所得と一時所得とでは税額にどれくらい差が生じるでしょうか。

納税額(基礎控除等は考慮外、税率は訴訟当時のもの)

給与所得で計算した場合

¥200,000,000-¥11,700,000(給与所得控除)=¥188,300,000

¥188,300,000×37%(税率)-¥2,490,000(控除額)=¥67,181,000(納税額)

一時所得で計算した場合

(¥200,000,000-¥500,000)×1/2=¥99,750,000

¥99,750,000×37%(税率)-¥2,490,000(控除額)=¥34,417,500(納税額)

納税額は約2倍もの差が出ます。

これについて課税庁(国税庁・国税局・税務署)は、平成10年まで「一時所得」であるとして納税者に指導してきました。

国税局職員が執筆した解説本にも明確に「一時所得」であると明記されています。

ところが平成11年頃より課税局は突如として「給与所得」である、と見解を変更しました。

そして修正申告に応じない納税者に対して追徴課税を行ったのです。

納税者の中には、一時所得税引後の利益で家を購入したりした人もいましたが、いきなり「過去の申告に間違いがあるから数千万円ないし数億円払え」と言われても釈然としないのは当然でしょう。

そこで国を相手取り行政訴訟が提起されたのです(100件以上)。

論点は

(1)雇用関係の無い海外親会社からのストックオプションによる利益が「給与」に該当するか否か

(2)過去に遡っての課税が妥当か否か(課税庁の指導経緯)


地裁では納税者勝訴の判決もありましたが、高裁ではいずれも敗訴。

そこで平成17年の最高裁による判決となりました。

結論から言うと、納税者敗訴。

判決内容は(1)について給与所得であるとした上で(2)については「重要ではない」として却下。

この最高裁判決には問題点があると考えます。

(1)の論点について、給与所得の定義として最高裁の判例(昭和56年)には、「雇用関係に無い海外の親会社」は含まれていません。

概念を拡大するならば再定義が必要なのにそれが今回の判決にはありません。

(2)の論点について、憲法84条では「租税法律主義」が定められていて、全ての課税は法律に基づいて行われなければなりませんが、方針変更を理由とする過去に遡っての課税は、憲法上許されるのでしょうか。
今回の訴訟では「信義則」違反での訴えでしたが、「重要ではない」と内容の審理に入りませんでした。

平成17年の最高裁判決は、建前はともあれ裁量行政の典型である税務行政を追認するような判決で、どうも腑に落ちません。

2013年05月14日

消費税 課税期間の短縮

赤字であっても、納付となることが多い消費税ですが、確定した消費税額を一括で納付するのはかなりの負担になります。

この確定税額を分納できる制度はありませんが、前もって届出をすることにより、3か月または1か月ごとに納付することができるようになります。


消費税の課税期間は、原則、個人事業者については1月1日から12月31日までの1年間であり、法人については事業年度とされています。

ただし、特例として、届出により課税期間を3か月または1か月に短縮することができる制度があるのです。

たとえば、個人事業者が課税期間を3か月に短縮する場合には、

1月1日~3月31日、4月1日~6月30日、7月1日~9月30日、10月1日~12月31日

までの各期間を課税期間とすることができます。

1カ月に短縮する場合には、1月1日から1か月ごとに区分した各期間が一つの課税期間となるわけです。

法人の場合には、事業年度の初日から3か月または1か月ごと区分した各期間を一つの課税期間とすることができます。


この、課税期間の特例の選択をするためには「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を、原則としてその適用を受けようとする短縮に係る各期間の開始の日の前日までに納税地を所轄する税務署長に提出することが必要です。

したがって、現在進行している月の途中で課税期間をいきなり分割することはできません。

早くても翌月から分割される形となります。

また、この特例の適用を最初に受ける際は、その年または事業年度開始の日から適用開始の日の前日までを一つの課税期間として確定申告をしなければなりません。

そして、この届出書を提出した事業者は、適用を受けた日から2年間は、

課税期間の特例の適用をやめること、

3か月ごとの課税期間から1か月ごとの課税期間への変更、

1か月ごとの課税期間から3か月ごとの課税期間への変更

をすることはできませんので注意が必要です。


課税期間を短縮した場合のデメリットとしては、その都度、申告しなければならず、手間がかかってしまいます。

しかしながら、輸出業者のように、経常的に消費税が還付されるような業種の法人などは、短縮することにより還付を受ける頻度が増えますので、資金繰りで有利になります。

また、消費税の計算において本則課税から簡易課税に早く変更したいとき、または、簡易課税から本則課税に早く変更したいときなど、課税期間を短縮・変更することにより適用の開始時期を早めることができるメリットがあります。

いずれにしましても、課税期間の短縮を選択する際には、綿密なシュミレーションが必要と思いますので、ご相談ください。

2013年05月13日

共有持分の贈与と放棄

共有持分の放棄はみなし贈与

共有者が自分の共有持分を他の共有者に贈与すると、受贈者には贈与税が課税されます。

共有者がその共有持分を放棄したときは、民法上、その持分は他の共有者に帰属することになっていますが、これは単独行為なので贈与には該当しません。

でも、相続税法上、贈与とみなされて、他の共有者に贈与税が課税されます。

共有持分の贈与も共有持分の放棄も、ここでは、同じ課税関係になります。


みなし贈与も所得税の非課税

他方、所得税法では、個人からの贈与により取得することによる利得は非課税です。

この「贈与」には、贈与とみなされるものを含むものと規定されています。

この段階では、贈与税と所得税の二重の課税は忌避されています。

共有持分の贈与と共有持分の放棄は、ここでも、同じ課税関係です。


個人間の贈与・放棄と譲渡所得

共有持分の贈与や放棄をした側に視点を移してみます。

個人に対して財産の無償移転をする行為は、共有持分の譲渡による財産権の移転ではありませんから、譲渡所得に対する所得税の課税問題が生ずることはありません。

従って、ここでも、共有持分の贈与と共有持分の放棄は、同じ課税関係です。


取得日・取得費の規定の摘要

ところが、譲渡資産の取得日・取得費の規定の適用に関しては、大きく課税関係が異なります。

個人間の贈与の場合には受贈者は贈与物件に係る贈与者の取得日・取得費を引き継ぐのですが、この規定においては、「贈与」には、贈与とみなされるものを含むものと規定されていません。

共有持分の放棄はみなし贈与とされる行為なので、放棄者の取得費はみなし受贈には引き継がれません。

従って、共有持分の贈与と共有持分の放棄では、課税関係が変わるのです。


2013年05月10日

経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額の特別控除

消費税率の2段階の引き上げを控え、商業・サービス業等を営む中小企業等の経営環境は、さらに厳しくなることが予想されます。

この産業の活性化を図るため、平成25年度の税制改正では、新たにこれらの業種を営む中小企業等を対象とした優遇制度が創設されました。


1.制度の概要

中小企業等が、商工会議所や認定経営革新等支援機関等の経営改善に関する指導及び助言を受けて、適用対象となる器具備品や建物附属設備を取得し事業の用に供した場合には、その取得価額の30%の特別償却またはその取得価額の7%の税額控除のいずれかが選択できるようになります。

2.中小企業等とは

次の条件を満たす法人又は個人で、青色申告をしている者をいいます。

①従業員が1,000人以下の個人事業者

②資本金1億円以下の法人

③中小企業等共同組合、商工組合、商店街振興組合、農業・漁業共同組合等


※税額控除については、個人事業者又は資本金が3,000万円以下の中小企業のみが選択できます。

3.適用対象事業

卸売業、小売業、飲食店業、サービス業、農林水産業など、商業・サービス業を中心として、幅広い事業が適用対象となります。

製造業や一定の風俗営業等は対象となっていません。

4.適用対象期間

この制度は、平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に、適用の対象となる資産を取得し、事業の供することが必要です。

5.適用対象資産

・器具備品⇒取得価額が1台30万円以上のもの

・建物附属設備⇒取得価額が1台60万円以上のもの

例えば、コピー機、陳列棚、照明設備、看板等です。

中古品を取得した場合には、対象資産になりません。

6.手続き

①商工会議所や税理士などの認定経営革新等支援機関から、経営改善に関するアドバイスを受ける。

②それに基づいて器具備品や建物附属設備を取得し、事業の用に供する。

③特別償却又は税額控除を受ける。

というのが、この制度の適用を受ける一連の流れです。

そのため、認定経営革新等支援機関等からアドバイスを受けたことを証明する書類の写しを、申告書に添付して提出しなければなりません。

2013年05月09日

修繕積立金

修繕積立金とは

読んで字の如く、将来の修繕の為に積み立てる金額です。

自社所有ビルの将来の修繕積立金は、単なる資産の振り替えです。

会計処理上の仕訳にすると以下ようになります。

定期預金(修繕のため)/普通預金

同業者団体等の会館の修繕積立金

同業者団体が会館を所有し、その会館の修繕のために毎年積立金を徴収しているような場合は、支出した修繕積立金は、「前払費用」として処理し、会館の修理が行われた事業年度に「修繕費」として経費処理します。

また 通常会費として徴収されたものであっても、同業者団体等において、修繕積立金等に充てられるものについては、上記のような取り扱いをするように法人税法の通達(税務当局の見解)では定められています。

自社の所有するマンションの修繕積立金

それでは、会社が社宅や社員寮あるいは、支店として所有するマンションの管理組合に払う修繕積立金は、どのようになるのでしょうか?

結論から言えば、以下の理由で、支払の都度「管理費」または「修繕費」として処理しているのが実情です。

①区分所有者は不可避的に積立金を負担する義務を負うこと

②組合員の合意による一定の修繕計画に基づき算出され、使途も共用部分に制限されていること

③たとえ、区分所有権を譲渡しても、管理組合や購入者からその積立金の残金について返還を受けることはないこと

④実際の修繕費の支出ごとに費用化していくことの会計処理の煩雑さを避けることなどです。

マンション管理組合に支払う修繕積立金に関しては明確な通達も指針もありません。

解釈によっては同業者団体等の「等」に含めるべきと言う解釈も成り立ちます。

今後の税収如何によっては、新たな通達が出るかもしれません。



2013年05月08日

退職所得について(10年退職金事件を素材に)

退職所得とは「退職手当・一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与」をいいます(所得税法30条1項)。

通常「退職金」と称される収入は退職所得に該当します。

退職所得は、退職後の生活を保障する性質のものであり担税力が低いことから、他の所得に比べて課税上優遇されています。

退職所得該当性が問題になる事例は少ないのですが、退職金として支給された金額が退職所得か給与所得かが争われた事案があります(10年退職金事件)。


事案の概要は、以下のとおりです。

経営が厳しくなったX社が、高齢者に対する多額の給与負担を免れるために、労使双方の合意の下に勤続10年定年制を採用し(再雇用制度あり)、15名に退職金を支給しましたが、その内13名の従業員は再雇用(役職、給与、社会保険等はそのまま継続)されました。

税務署長は、X社に対して、従業員は退職していないのだから当該支給された退職金は給与所得に該当するとして給与所得に係る源泉徴収納付義務を告知すると共に不納付加算税の賦課決定処分を行いました。

これに対してX社は不服申立てを経て、処分の取消訴訟を提起しました。

最高裁判所は、以下の要旨のように、退職所得該当性を判断する一般的規範を論じた上で本件の退職金は給与所得であると結論付けました(最高裁昭和58年12月6日第三小法廷判決)。

ある金員が「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に該当するためには、

①退職すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されること

②従来の継続的な勤務に対する報酬ないしその間の労務の対価の一部の後払いの性質を有すること

③一時金として支払われること

の要件を備えることが必要である。

また、「これらの性質を有する給与」に該当するというためには、それが形式的には上記の各要件を備えていなくても、実質的にみてこれらの要件の要求するところに適合し、課税上、上記「退職により一時に受ける給与」と同一に取り扱うことを相当とするものであることを必要とする。

本件10年退職制度は、勤続満10年に達した従業員に退職金名義の金員を支給するための制度上の手当てとして設けられていたに過ぎず、したがって、上記定年制の下においては、従業員は勤続満10年で当然に退職することになるものではなく、むしろ従前の勤務関係をそのまま継続させることを予定し、当初からこのような運用を意図していたと見るのが相当である。

このような場合に、その勤務関係が勤続満10年に達した時点で終了したものであると見うるためには、上記制度の客観的な運用として、従業員が勤続満10年に達したときは退職するのを原則的取扱いとしていること、及び、現に存続している勤務関係が単なる従前の勤務関係の延長ではなく新たな雇用契約に基づくものであるという実質を有するものであること等を窺わせるような特段の事情が存することを必要とするものと言わなければならない。

本件の事実関係からは、直ちに、本件係争の退職金名義の金員の支給を受けた従業員らが勤続満10年に達した時点で退職しその勤務関係が終了したものと見ることはできないと言わなければならない。

とすれば、上記金員は、名称はともかく、その実質は勤務の継続中に受け取る金員の性質を有するものという他ないのであって、所得税法30条1項にいう「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に当たるための3つの要件のうち「①退職すなわち勤務関係の終了によって初めて支給されること」の要件を欠くものと言わなければならない。


以上のように、最高裁は当該退職金について形式ではなくその実質を重視し、内容を詳細に検討しています。

本判例の退職給与該当性ついての規範部分は、判断基準として現在も重視されています。

同様の退職制度を検討される場合には所得税の課税関係に注意が必要です。

2013年05月07日

復興特別所得税に伴う預金利息の計算

平成25年1月1日から平成49年12月31日までの25年間、東日本大震災復興のための復興特別所得税が課税されます。

従来は、預金利息に対して所得税15%及び住民税5%が課税されていましたが、平成25年1月以降は、復興特別所得税「所得税×2.1%」が併せて課税されます。

復興特別所得税の源泉徴収は、所得税の源泉徴収の際に併せて行うこととされているため、源泉徴収の対象となる支払金額に対して合計税率を乗じて計算した金額を源泉徴収します。

支払金額×合計税率(%)=源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額

*合計税率(%)=所得税率(%)×102.1%


預金利息が銀行から入金されるとき、銀行は以下の源泉税を差し引いた金額を入金しています。

国税(源泉所得税)   15%
国税(復興特別所得税)  0.315%(所得税15%×2.1%)
地方税(住民税利子割)  5%
合計          20.315%


銀行からの利息計算書があれば、それぞれ所得税と住民税の税額が記載されていますが、利息計算書がない場合がほとんどだと思いますし、法人税の申告時には、源泉所得税と復興特別所得税を別々に認識する必要がありますので、按分計算が必要となります。

入金された預金利息は、利息総額の79.685%(100%-20.315%)であり、その利息総額の15.315%が所得税及び復興特別所得税の合計額ですので、以下の手順で計算します。

① 銀行からの入金額÷79.685%=預金利息の総額(1円未満切捨)

② ①×15.315%=所得税及び復興特別所得税(1円未満切捨)

③ ②×(2.1÷102.1)=復興特別所得税額(50銭以下切捨、50銭超切上)

④ ②-復興特別所得税額=所得税額

⑤ ①×5%=住民税利子割額(1円未満切捨)

復興特別所得税の端数だけ、1円未満切捨ではなく、50銭以下切捨、50銭超切上となりますので注意が必要です。

端数の切捨て、切上げ処理によって、受取利息の総額はズレる場合がありますので、最終的に受取利息の金額は次の算式で確認します。

銀行からの入金額+所得税+復興特別所得税+利子割額=受取利息


原則として支払を受けるごとに按分計算を行うことになっていますが、非常に細かい数字の計算となり、手間がかかりますので、期末に一括して行ってもよいことになっています。

2013年05月02日

古物営業法の注意点

単なる中古品の買い取りだけではない

昨年9月、ソフトバンクが「iPhone(アイフォーン)5」の発売に伴い、旧型の下取りサービスを始めたことに対し、警視庁が古物営業法違反(無許可営業)に当たる恐れがあるとして指導していたというニュースが話題となりました。

実は意外なところで違反してしまう恐れのある古物商営業。今日は、どんなサービスを行う上でどんな行為が古物商営業許可の対象となるかのおさらいです。


下取りサービスで問題になった点

家電量販店や通信販売でも、新機種を購入する際に下取りを行うサービスは多く見受けられます。

基本的に、中古品の販売や下取りでは古物商の営業許可を取る必要がありますが、お客様へのサービスの一環として査定をせず一律で値引きを行う場合は許可の対象外とされています。

しかし、査定をしなくとも年式や型番により値段をランク付けした上で下取りを行う行為は、買取料金と売却する新品の代金を相殺することになり、実質上古物の買い取りに当たるため許可が必要になります。

この点、ソフトバンクが行っていた下取りは、型番に応じ値引き額を決めていたため、古物商営業許可が必要だと判断されてしまったわけです。


こんなときにも注意が必要

下取りサービス以外にも、次のようなサービスを行う場合には古物商営業許可が必要となるケースもありますのでご注意ください。

例1.買い戻しと転売

顧客に販売した製品を、その顧客本人から買戻し転売する場合に許可は必要ありません。

しかし、その顧客から更に別の人に転売されていて、そこから買い戻す場合や、自社製品を売った相手以外の人から買い戻す場合は許可が必要です。

例2.販売だけでなくレンタルも

古物を販売する場合だけでなく、レンタルをする場合も許可が必要です。

メーカーから直接新品を購入してレンタルする場合は必要ありませんが、たとえば古着のドレス等を買い取り、レンタル事業を行う場合などが古物商営業許可の対象となります。

2013年05月01日

事業所得と譲渡所得の区別

今回は、事業所得と譲渡所得との区別です。

事業所得は経済活動の成果であるのに対して、譲渡所得は値上がり益(キャピタルゲイン)の清算課税としての性格を有するので、両者の区別が問題になります。

例えば、土地を売却すれば通常は譲渡所得になりますが、宅地造成業者が土地を売却した場合には事業所得になるのかという問題意識です。

一般論としては、資産の譲渡があった場合の所得分類については、所有者の意思によらない外部的条件の変化に基因する資産価値の増加は譲渡所得に当たり、所有者の人的努力と活動に基因する資産価値の増加は事業所得(又は雑所得)に当たると解されています(金子宏「租税法」より)。

平たく言えば、自ら努力して資産の価値を増加させた場合にはその増加部分は事業所得(又は雑所得)となり、経済状況や地価の高騰などの外部的な事情により資産の価値が増加した場合にはその増加部分は譲渡所得になるということです。

先ほどの土地の売却の例で言えば、地主がその所有地を現状のまま一回的・散発的に譲渡した場合には譲渡所得が発生しますが、それを宅地として造成して分譲した場合等は事業所得(又は雑所得)が発生することになります(東京高裁昭和48年5月31日判決)。

また、宅地を造成しなくても、土地を営利目的で反復継続的に譲渡した場合には、譲渡所得ではなく事業所得が発生すると考えられます。

上記のように事業所得(又は雑所得)が発生するとしても、宅地の造成に着手した時期又は反復継続的譲渡を開始した場合までの資産の増加益は値上がり益(キャピタルゲイン)であるから、この場合の譲渡益の中には、譲渡所得と事業所得(又は雑所得)の両方が含まれていると考えられます。

このような場合には、その全体を事業所得(又は雑所得)として課税するのではなく、譲渡所得と事業所得(又は雑所得)とに分けて課税すべきであるとされています(二重利得法、松山地裁平成3年4月18日判決)。

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